その周りを非常線が張り巡らされ、敷地内は青いビニールシートで覆われている。その内側では、神奈川県警の捜査員たちによって敷地の地面が掘り返されていた。
だが、警察が目をつけたその地面は、コンクリートで固められていた。それを砕いてから、さらに下の土壌を掘り進む。
そして地面から1メートルほど掘り進んだところで、ビニールシートに包まれた女性の遺体が発見された。前年の12月から行方不明になっていた、藤沢市に住む遠山明美さん(33)であった。
そして、警察はその家に住む会社員、山下浩之(34)を死体遺棄容疑で逮捕した。山下は明美さんと交際しており、しかも彼女は妊娠8か月という身重だった。
山下と明美さんが知り合ったのは、事件から約2年半前。山下が仕事で訪れた取引先で、勤めていた明美さんに声をかけたのきっかけに交際が始まった。
独身の明美さんに対し、山下にはすでに妻子がいた。当初、結婚していることを隠して交際していた山下だったが、やがて明美さんに知られることとなる。それでも明美さんは、山下との交際を続けていた。
その山下だが、自他ともに認める「モテモテのイケメン」だった。ルックスもよく、しかも話もうまくて女性の扱いもかなり慣れていた。学生時代からかなりモテたらしく、「オンナに不自由しないヤツ」と周囲からささやかれていたという。
また、山下の妻は国際線の客室乗務員だったため、仕事で家を空けることが少なくなかった。それを利用して、山下は明美さんとの密会を重ねていった。
そして、2人の関係は月日を経るごとに深まっていく。2004年の春頃には、山下は明美さんの住むアパートにほとんど入り浸りのような状態になったという。
それでも、山下の妻は自分が家を空けがちなことや、夫の「仕事の都合で外泊する」という言葉を鵜呑みにして、とくに山下を疑わなかった。
そうやって、山下は自宅と明美さんのアパートを行き来するような生活を楽しんでいた。とくに明美さんのアパートの周囲では、2人を夫婦だと思っていた住民も少なくなかったらしい。だが、その生活も長くは続かなかった。
(つづく)