『泥だらけの制服』の「はじめに」は、中学生の楽しんごが書いた遺書でいきなり始まる。本編には、壮絶ないじめ体験、性への目覚めなどが記されている。
女子に告白したこともある「普通のヤンチャな少年だった」楽しんごは、中学に入ってからいじめを受けた。楽しんごの最初の発見は、(中学生なのに、こんな残酷なことができるものなの?)という驚きだったらしい。いじめが日常化しても学校は休まず「いたって普通に授業を受けた」楽しんごが、仲間を巻き添えにしないため、「友達と帰っても少し離れて歩くようになって」いった様子らが、綴られている。中学の先輩男子とファーストキスを体験したのち、「女の子に対して特別な感情を抱くことがなくなった」そうだ。
『泥だらけの制服』の本文には「普通」という言葉が多く使われていたが、純粋な少年の中で「普通」「特別」「自然」「自分らしさ」というものがごちゃまぜになっていく様子が伝わってきた。「おわりに」では、亡くなった上原美優さんへの思いが記されている。
楽しんごの笑顔の裏側が書かれた一冊。(竹内みちまろ)