荻野は昨年5月に右ヒザ半月板を損傷。そこからシーズンを棒に振ったが、機動力ではすでにファンに認知される。今季は『ポスト西岡』としてショートのレギュラーを狙うが、スローイングの難があり、二塁手・井口資仁とのコンビネーションもまだまだレベルアップしなければならないところにある。しかし、打撃は完全回復…、いや、ルーキーイヤーの昨季以上に期待できそうだ。オープン戦の打率は4割7厘(12球団2位)。三塁打も2本マークしており、「守備に少々不安があっても使うべき」という声も高まっている。
「盗塁にも定評があるし、荻野は『1番・遊撃』で決まりでしょう」(プロ野球解説者の1人)
専門家の見解にケチを付けるつもりはないが、今の荻野にとって、最大の負担は『守備』ではない。『盗塁』ではないだろうか。実は、荻野は初盗塁を決めたのは、3度目の挑戦だった。2度失敗しており、二塁盗塁で見せたスタートダッシュの速さはまだ蘇っていない。本人も「(盗塁のスタートダッシュは)実戦で感覚を取り戻したい」と、メディアに質問される度にそう応えていた。球界関係者がこう続ける。
「右ヒザの再発を恐れているんですよ。守備に関しては無我夢中だから感じていませんが、盗塁に関しては故障前のカンを取り戻していません」
荻野から恐怖心が払拭されるまで、『1番』は岡田幸文、清田育宏、新人の伊志嶺翔太あたりに譲ってもいいのではないだろうか。
「新人の伊志嶺も『実戦のなかで育てていくべき』との声が出ています。伊志嶺も高い機動力を持った選手です。西村(徳文)監督の性格を考えると、荻野を我慢して使い続けることも、伊志嶺を育てることも両方考えられます」(前出・関係者)
おそらく、2週間強延期された開幕戦まで、荻野は「単独スチールのスタートダッシュ」に最重点を起いて調整していくだろう。チーム全体練習では、井口との併殺プレーの呼吸合わせにも時間を割かれるはず。そうなると、問題は『打撃』だ。「守備の不安があっても使うべき」と推された要因は打撃面での成長にあった。しかし、「打撃は水物」と称されるように、ちょっとした感覚のズレや、実戦からほんの少し遠ざかるだけで一気に調子を落としてしまう。荻野にとって、開幕延期は長短の両方があるようだ。
「パ5球団は荻野の足に一目置いています。対戦チームはペナント本番まで『対荻野』のクイックモーションを隠しているとの情報も交錯しています」(同)
相手球団の研究を乗り換えなければ、さらに上のステージには進めない。新人選手が2年目に躓くのはそのためだ。開幕延期をプラスに転じてもらいたい。