開口一番はキウイ自身で、演目は漫談「真打への道」。ふかぶかと客席に頭を下げたキウイは「今日の会で師匠から真打内定を取り消すとか言われなきゃいいなぁ…」とポツリ。爆笑を誘った。
共演者の志らくはキウイが前座の頃の珍エピソードを取り上げ「(キウイは)落語さえやらなけりゃいいヤツなんで宜しくお願いいたします」とコメント。これまた爆笑を誘う。小説家としても多数の著作を発表している談四楼は「あの新潮社がキウイの本を出すなんて…新潮社もどうしちゃったんでしょうか?」これも爆笑で、辛口に見せて実は兄弟子の優しさによる引き立てが分かる。
仲入り後はキウイによる落語『たがや』。
談志はキウイが高座に上がると舞台袖でジッとキウイの噺を聴き、そして高座で「キウイねぇ…脇で聴いている分にはそんなに悪くない」「三平さん(先代)みたいだ」と好評価。この日、談志は体調も機嫌も良く、得意のブラックジョークを連発し会場を沸かした。
ジョークが終わると、談志は出演者である弟子を高座に呼びこみ座談会がはじまった。「落語をパロディにしている」「キウイが『芝浜』をやればチケット400〜500枚は売れる」といった発言にキウイは恐縮しっぱなし。
最後に談志はキウイへ「本(『万年前座』)よく書けている。やっぱ俺に似たのかなぁ」と、師弟の深い絆を見せて会をしめた。
筆者は談志ファンを自称する観客数人にコメントを求めたところ「キウイさん、初めて見たけど想像以上におもしろい。今度、独演会にも行ってみたい」との声もありキウイは自身の持つ魅力を観客に存分にアピール出来たと思われる。
かつて、談志は『万年前座』の後書きでキウイについて「ことによると、落語界に何だか妙なモンスターが出るやも知れない」と評した。落語モンスターは徐々にその恐るべき牙を剥きつつあるのだろうか?
最後にキウイ自身に会の感想を聞いたところ「スンゲー疲れたぁー! 次も頑張るからねぇー!」と朗らかに筆者に語った。どうやらこのモンスターはフワフワと明るくて、あまり恐くはないようである。
(「昭和ロマン探求家」穂積昭雪 山口敏太郎事務所)
【参照】山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou