そんな若林にとって地獄の現場が、飲み会。「何をしゃべっていいのかわかんない」という理由で大の苦手。誘われる前に帰る、出演者とエレベーターでバッティングしないようにする、「次の現場がある」と慌てる、「ネタ作りをしないといけない」と余裕を消すなど、数年で編みだした断りの名台詞は数知れず。
しかし、若手時代はそうもいかない。強制的に参加したが、ここでも若林マジックをいくつも編みだした。
料理が鍋コースの場合は、ひたすらアクを取る。気づけば、運ばれてきたときよりも、ダシが透き通っている。
「俺がおまえぐらいの年だったときはな…」と、先輩からの説教がはじまると、“まきびし”という技で切り抜ける。それは、聞いているふりをしながら、財布の小銭を床にばらまいてしまうものだ。「話の途中ですみません」と謝りながら小銭を拾い、「手が汚れちゃったんで」とトイレに逃げる。
会を終えたいときは、「デザート、いいっすか?」と終了の意思表示と確認。さらに、着ているジャケットに何度も手を当てて、よそよそしい雰囲気を出し、「このあとに仕事がある」ことを身体で伝える。
人見知り芸人・若林。人嫌いが人を笑わせる商売をしているのだから、因果なものだ。(伊藤由華)