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ユダヤ人作家、シュテファン・ツヴァイクの知られざる半生を舞台化。加藤健一事務所の舞台『コラボレーション』

 1930年代から40年代にかけてヨーロッパで人気があった、オーストリアのユダヤ系作家・シュテファン・ツヴァイク。今では当時ほど読まれなくなっているが、多数の伝記文学や歴史小説を残した彼は、芸術に生き、その魂とともに激動の時代の犠牲者となった。現在、新宿・紀伊國屋ホールで上演中の加藤健一事務所の舞台『コラボレーション』(2月19日(土)〜27日(日)まで。演出:鵜山仁)ではシュテファン・ツヴァイクとある音楽家の知られざるエピソードをドラマティックに再現。お昼のトーク番組でおなじみの、あのヒトも認めたハンサムがツヴァイクを演じている。

 1931年ドイツ、ドイツ人作曲家リヒャルト・シュトラウス(加藤健一)とオーストリアのユダヤ系作家・シュテファン・ツヴァイク(福井貴一)は出会い、オペラ「無口な女」を作り上げる。しかし、ドイツ最高峰の音楽家として名高いシュトラウスはナチスドイツ宣伝省のハンス・ヒンケル(加藤義宗)にナチス政権に協力するよう促され、ユダヤ人であるツヴァイクとの共作も禁止を余儀なくされてしまう。人種による迫害で身の危険を感じたツヴァイクは秘書のロッテ(加藤忍)とともにある計画を思いつき…。

 ナチスの求めに応じて、当時ドイツと同盟関係にあった日本の為に「皇紀2600年奉祝曲」まで書いている後期ロマン派を代表する作曲家リヒャルト・シュトラウス(1949年没)。彼が家族の為にナチに協力せざるを得なかった苦悩と、晩年に出会った天才作家ツヴァイクへの執着心を主演の加藤がパワフルに演じている。年齢も性格も対照的な女性二人、リヒャルトの妻パウリーネ(塩田朋子)と、ロッテ(加藤忍)も好演。映画「戦場のピアニスト」と同じ作者による作品であり、過酷な状況でも高潔に生きた当時の芸術家たちの心をとらえたセリフは絶品。戦争や迫害の生々しさは控えているが、不遇な劇場支配人(河内喜一朗)や、「ハイル・ヒトラー!」(ヒトラー万歳)の敬礼を忘れないヒンケル(加藤義宗)らが、ナチスの時代を表現するには充分な存在感がある。

 さて、肝心なシュテファン・ツヴァイクは、ドイツ留学の経験もある舞台俳優・福井貴一が演じたが、歴史小説「マリー・アントワネット」や「メアリー・スチュアート」などの代表作で知られるツヴァイクはとてもハンサムで、今なお世界中に女性のファンを持つ。音楽をテーマにした古典的な舞台にも意欲的に出演し、人気司会者でもある黒柳徹子さんもそのひとりらしく、今月15日に加藤健一がテレビ朝日系「徹子の部屋」に出演した際、「この人なら演じてOK」と福井のツヴァイクにお墨付きをもらった。舞台上で福井が演じたツヴァイクは多分当時のご本人よりも若く、少々気の弱いキュートなタイプの男性として描かれているが、「私も必ず拝見したい」と言っていた徹子さんの評価が気になるところ。会場の新宿・紀伊國屋ホールには、ファンの花輪とともに彼女からも大きな花が届いていた。(コダイユキエ)

(舞台写真)撮影:石川純

加藤健一事務所『コラボレーション』は新宿・紀伊國屋ホールにて27日(日)まで。

■『コラボレーション』加藤健一事務所
2011年2月19日(土)〜27日(日)
新宿・紀伊國屋ホール
作:ロナルド・ハーウッド 訳:小田島恒志 小田島則子 演出:鵜山仁
出演:加藤健一、福井貴一、加藤忍、塩田朋子(文学座)、加藤義宗、河内喜一朗(Studio Life)

<お問い合わせ>加藤健一事務所
<HP>http://homepage2.nifty.com/katoken/ (インターネット予約可)

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