テレビドラマ以外にも、CMやアニメとのタイアップも多数あった。『夢冒険』は『アニメ三銃士』(1987-1989年/NHKエンタープライズ)の主題歌で、『アクティブ・ハート』はOVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)『トップをねらえ!』(1988年/GAINAX)の主題歌だった。どちらも人気アニメだったため、曲の売れ行きも良かったようだ。
特に『トップをねらえ!』は主人公の名前が「タカヤ・ノリコ」で、その声優が日高のり子で、主題歌が酒井法子の「トリプル・ノリコ」を売りにしていたこともあって、のりピーの存在感も強かった。『新世紀エヴァンゲリオン』で知られる庵野秀明の初監督アニメでもあるため、ファンの多い名作。
また彼女がヒロインのPCエンジン用ゲームソフト『鏡の国のレジェンド』(1989年/ビクター音楽産業)なんてものまであった。のりピーの活躍の舞台は通常のアイドルの枠を遥かに飛び越えて、アナログとデジタルの融合したハイパー・メディア・アイドルの域に達していたのである。その人気は国境をも超え、台湾にもファンが多い。
小向美奈子(25)も同様にテレビアニメ『ホイッスル!』(2002-2003/アニマックス)の主題歌を歌っていた。それだけではなく主人公の声優までやっていたのである。『週刊少年ジャンプ』(集英社)の長期連載漫画が原作ということもあって、これも人気アニメだった。また、特撮映画『爆竜戦隊アバレンジャー DELUXE アバレサマーはキンキン中!』(2003年/東映)の王女フリージア役も務めた。
『週刊少年ジャンプ』との兼ね合いでは、桂正和さんが酒井法子の大ファンということで、ジャンプ連載漫画『電影少女』の単行本巻末で対談していたこともある。『週刊少年ジャンプ』は1995年の歴代最高記録653万部がギネスブックにも登録されているように、世界で最も売れている漫画雑誌。そこに関われるアイドルは国民的スタアと考えて間違いない。
そんな超A級アイドルの二人が薬物によって人生を狂わされてしまったのは、さながら『ドラゴンクエスト』で竜王に誘拐されたローラ姫や『スーパーマリオ』で大魔王クッパに連れ去られたピーチ姫のような状況に思える。のりピーの元旦那を見れば分かることだが、薬物汚染はヤンキー文化の産物である。小向美奈子も現在フィリピンで恐い連中と一緒にいると噂されている。一方オタク層は、薬物どころか酒や煙草にすら拒否反応を示す者が多く、そういう意味でも対極にある。酒や煙草を好むオタクもいるが、彼らはその境界線上にいる感じだろう。
じゃあどうすればいいのかという話だが、これまで漫画やアニメやゲームと縁の深かった二人なんだから、彼女たちが社会復帰できるよう、それらの業界人が動いてくれてもいいんじゃないかな。薬物汚染とは真逆のベクトルに位置する社会問題といえば、草食系男子や引きこもりやニートである。彼らは漫画やアニメやゲームを好むオタク層だったりすることも少なからずある。オタク文化圏でかつて持て囃されていた彼女たちを、ヤンキー魔窟からオタク城下に奪還すべきなのだ。
そうすれば彼女らは、酸いも甘いも知り尽くした肉食系姐さんとしてヒキニート草食系男子を先導し、ヒキニート草食系男子は、肉食系姐さんのライフライナーとして足元を照らす。そのようにして、互いに道を踏み外さずに歩んでいける幸福な関係を築くことができれば、新たなレジェンド(伝説)が生まれることだろう。僕らの手にアイドルを取り戻せ!(工藤伸一)