『デッドマン・ワンダーランド』は、東京大震災後の近未来を描くアクション作品である。これまでは完全民営化刑務所「デッドマン・ワンダーランド」に送られた囚人達の生き残りをかけた闘いが中心であった。しかし前巻で刑務所を仕切っていたプロモーター・玉木常長の陰謀に終止符が打たれ、「デッドマン・ワンダーランド」は閉鎖される。この巻からは新たな章に突入する。
バラバラになったG棟の住人達は東京大震災の元凶であるレチッドエッグを倒すため、マキナ元看守長と共に再び「デッドマン・ワンダーランド」に集結する。そしてシロとレチッドエッグの関係や剥切燐一郎所長の陰謀、主人公・五十嵐丸太の母親・空絵の過去など物語の核心に迫る謎が明かされる。
『デッドマン・ワンダーランド』の魅力は、読者を絶望させる理不尽さにある。丸太は平凡な中学生であったが、突如現れた「赤い男」(レチッドエッグ)に級友を皆殺しにされる。しかも、級友殺害の罪を着せられ、死刑囚として「デッドマン・ワンダーランド」に送致される。「デッドマン・ワンダーランド」では囚人への非人道的な扱いが日常化していた。
この巻の理不尽さも際立っている。丸太の運命を一変させた憎むべき存在であるレチッドエッグの正体は、幼馴染みで非人道的な囚人生活の心の支えになっていたシロであった。レチッドエッグを倒すことがゴールであるが、それはシロの死も意味し、ハッピーエンドにはならない。
さらには母親の空絵がレチッドエッグの誕生に関わっていたことが示される。想定外の災厄が降りかかることは理不尽であるが、それ以上に親しい人物が災厄の元凶であった場合の絶望感は大きくなる。この大きな絶望に丸太がどのように立ち向かうのか、今後の展開に注目である。
(林田力)