北海道日本ハムファイターズの中田翔はオープン戦で快音を響かせている。チームのキャプテンにも選ばれ心機一転、新たなシーズンの開幕へ向け、牙を磨く。
■屈辱に塗れた昨年
激闘を繰り広げた昨年のワールドベースボールクラシック。大会開幕直前までは日本代表の4番候補に挙げられながらも結局、一度もその座を得ることはなかった。大会中には成績が振るわずスタメンから外れる試合もあるなど悔しさの残る結果に終わる。
その後、シーズンではさらに「屈辱的」ともいえる一年を送った。チームは春先より低迷し、投打ともまるで噛み合わずに復調の兆しがみられないまま試合を重ねる。そして、主軸でありチームの顔でもある中田自身の成績も不振を極め、連敗が続くチームの起爆剤になれなかった。
また、シーズンが進むにつれ成績もさることながら、存在自体が霞んでしまったのも事実である。好機では凡打を繰り返し、かつて放ち続けていた威圧感も薄れ、眼光もどこか力ないものに。あきらめのようなネガティブな空気が中田を覆っているようにも感じられた一年だった。打率はリーグワースト(規定打席以上)と散々な結果となり、シーズンを通し、前年チャンピオンチームの低迷の要因として常に中田の名前が挙がり続けた。
■失った多くのものを取り戻すために
2018年、中田はキャプテンを任され、オープン戦でもここまで4番での出場を続けている。栗山監督からの信頼も厚いままだ。
3月4日、本拠地で行われたロッテとのオープン戦、第一号となるホームランを放ち、「まだまだこれから。チームが開幕に向けて勝てるように」と語り、新キャプテンとして結果を残す覚悟が窺える。チームを勝利に導き個人タイトルも争うような活躍を、そして、もう一度あの強烈なオーラを取り戻さなければならない。
29歳を目の前にし、残されている時間もそう多くはない。ファイターズの4番として、パリーグの顔として、主役であり続ける為にも昨年の不振を払拭させるほどの成績が求められる。それらの結果を手にするためには選手生命を懸けて挑まなければならないだろう。
そして、もうひとつ。
2年後、再び日の丸を背負い、日本の4番の座を得る為にも。
(佐藤文孝)