日ハムナインがキャンプ地・米アリゾナ州スコッツデールに出発したのは1月28日だった。現地では練習試合も行うが、体力作りや投内連携プレーなど基礎的なトレーニングがメインとなる。注目の新人・清宮幸太郎(18=早実)は笑顔でカメラマンに手を振っていたが、出発が2時間遅れとなるハプニングにも見舞われている。
このハプニングはアリゾナで始まる“内紛の前兆”でもあったようだ。
「栗山(英樹=56)監督は、守備のコンバートも示唆していました。清宮を使うつもりなら、『アイツ』を動かさなければなりません」(ベテラン記者)
“大谷ロス”のダメージを補うコンバートがスタートする。そのコンバートだが、「清宮を使う」ことが大前提だという。
他球団だが、清宮を担当したスカウトがこう続ける。
「時間を掛けるのなら、将来的に三塁か外野を守れるようになると思う。下半身も強いし、駿足ではないが、走ることもできる。だけど、下半身の(筋力の)使い方ができていない。今のレベルだと、高校時代に守った一塁しかできないかな…」
しかし、日ハムの一塁ベースには中田翔(28)がいる。どちらかを指名打者で使うというわけにもいかないようだ。
「昨季、2ケタ本塁打をマークしたのは、レアード、中田、大田の3人。中田を三塁に動かすとなれば、レアードを指名打者か外野に動かさなければなりません。外野には若手成長株の西川、クリーンアップを託せる近藤、そして昨季15本塁打を放った大田らがいます」(前出・ベテラン記者)
「打者・大谷」は指名打者での出場が多かった。指名打者が空席となったわけだが、栗山監督を始めとする首脳陣は「打者・大谷」の喪失を「投手・大谷」以上に捉えており、一発の期待できる選手をそこにはめようとしている。左バッターの新外国人選手、オズワルド・アルシアがその有力候補で、指名打者でのフル出場が有力視されている。
「近藤を捕手に再コンバートするビジョンも出ています。近藤は腰を故障して以来、ほとんどマスクをかぶっていません。非凡な打撃センスを伸ばすべきと決めたからですが、その近藤を捕手に戻せるのなら、一石二鳥。日ハムは正捕手だった大野をFA流出しており、その穴も埋められますから」(前出・同)
近藤を捕手に戻せるのなら、外野の一角が空く。「その外野を守れる内野手は?」という見方をすると、中田の名前が浮かんでくる。中田は若手時代、レフトを守っていた。守備は決して上手ではなかったが、肩は強い。レアードや新加入のアルシアよりも頼りにはなるはずだ。「一塁・清宮、捕手・近藤、指名打者・アルシア、左翼・中田」。まとまりはいい。しかし、中田は面白くないだろう。
「中田は今季から『主将』ですよ。内野から外野にコンバートされたら、左遷されたと捉えるかも。内野手はピンチの度にマウンドに集まりますが、外野はそうではない。ヒマになる分、中田は疎外感を覚えるはず」(プロ野球解説者)
また、近藤も守備での負担が多い捕手に戻れば、期待されている打撃にも影響が出るかもしれない。「一塁・清宮、捕手・近藤、左翼・中田」はアリゾナでテストされるが、栗山監督はアルシアを時々守らせるなどし、「指名打者」で近藤、中田、清宮を使い分け、守備位置を完全固定しないコンバートを仕掛けてくるのではないだろうか。
「日ハムが優勝戦線に復帰するには、中田の復調が不可欠です。清宮厚遇のチーム状況にフテ腐れるかもしれません。でも、中田がレフトをしっかりと守れば、他球団の評価は大きく変わります。昨年オフ、FA宣言を封印しましたが、『外野も守れること』が証明されれば、獲得から下りたセ・リーグ球団の評価も変わってきます」(前出・プロ野球解説者)
外野コンバートは、たしかに左遷の様相が強い。しかし、考え方を変えれば、自身を他球団に売り込む絶好の機会ともなる。清宮入団から始まったこの玉突き事故のような大コンバート劇は、チームを混乱させるだけではなく、中田の去就問題を再燃させそうだ。