「三冠王です!」
ホームラン王、首位打者、打点王。期待は高まるばかりだが、黄金ルーキーに対する別の評価も聞かれるようになった。
「首位打者タイプのバッターになるんじゃないか?」――。
良くも悪くも、清宮の打撃フォームは独特だ。対戦投手のボールをぎりぎりまで引き付けてからフルスイングする。逆方向にも本塁打が多いのはそのためだが、その長所がプロではマイナスに転じるという。
「清宮に関しては12球団全てのスカウトが追いかけてきました。実際に1位入札したのは7球団ですが、裏を返せば、清宮の長所と短所は他11球団も知っているということになります。清宮を担当したスカウトの大半は、『プロでは首位打者タイプのバッターになる』と評価しています」(球界関係者)
清宮が尊敬する福岡ソフトバンクホークスの王貞治会長もテレビ番組に出演し、「(打)率を残すタイプになると思う」と話していた。こうした評価について、清宮を担当した在阪球団スカウトがこう付け加える。
「清宮の長所は広角に打てること。でも、プロでは逆方向(左翼スタンド)への本塁打はなかなか出ないでしょう。ホームランバッターというとパワータイプ、強引なフルスイングのイメージも強いが、彼は器用で軟らかいバッティングをします。内角、外角、高め、低め、来たタマに対して素直にバットを出してきました。でも、プロでは対戦投手に力負けするときもあれば、清宮君の見たことのないような曲がり方をする変化球も放られるでしょう。バットに器用に当てる事はできるので、本塁打ではなく、逆方向へのヒットを量産しそう」
また、新人選手だけの合同自主トレでもこんな場面が見られた。ファーストミットではなく、内野用の小さなグラブを使用するよう、指示された。栗山英樹監督(56)も一部メディアで明かしているが、三塁と外野の適性をテストしてみるという。慣れた一塁以外のポジションをさせるということは、守れる守備位置を増やすためで、要は実戦で使っていきたいからだろう。
試合で使ってもらうには、まずは栗山監督の期待に応え、三塁を守れるようにならなければならない。「守備面では苦労する」との評価もドラフト前から多く聞かれた。そう考えると、1年目は主に代打出場ということになりそうだ。
「日ハムには清宮単独インタビューの取材申し込みも殺到しています。基本的に野球に集中させる方向ですが、断り続けたら、今後のメディアとのお付き合いにも影響してきます。メディア取材にも出さざるを得ないでしょう」(ベテラン記者)
現在、清宮は自ら望んで長時間の打撃練習を行っているという。それを指して、こんな指摘も聞かれた。
「早実は練習時間が長くない。体力面でプロの練習に付いていけないのではないかと危惧する声も出ています。清宮が居残り練習のようなことをやっているのは、体力不足の評価を覆したいと思っているからです」(前出・関係者)
代打要員で一軍ベンチに待機させるとしたら、それが清宮の将来のためになるのかどうかが問われる。おそらく、「二軍戦でフル出場を」の意見も出てくるだろう。また、長時間の練習経験が少ないだけに、キャンプ中盤で息切れしてしまうかもしれない。焦りは禁物だ。
現時点で清宮は一軍キャンプ帯同の方向だという。プロスカウトの「首位打者」タイプなる『裏・評価』を覆したいのなら、体力強化、守備練習など目の前の課題を一つずつクリアしていくしかない。未完成のまま、実戦デビューさせるよりも、じっくりと二軍で鍛え直したほうがよさそうだが…。