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龍馬にあやかって恋愛成就!? 最も地味な龍馬ゆかりの珍スポット

 いよいよ満を持してスタートしたNHKの大河ドラマ『龍馬伝』。民放のCMまでもが便乗して龍馬一色の感がある。龍馬の墓や寺田屋など、龍馬ゆかりの地は、さぞ賑わっていることだろう。そんな中、もっとも地味な龍馬ゆかりの珍スポットを訪ねてきた。
 
 JR品川駅から京急に乗り換え、電車に揺られること数分。立会川駅に到着。降りた瞬間から、商店街は旗や看板など、見るものすべて龍馬だらけ。「若き日の龍馬がゆく」というキャッチフレーズと似顔絵のオンパレードだ。
 たしかに龍馬が世話になった土佐藩の屋敷があり、ペリーの黒船来航時に築かれた砲台跡もある。そもそもこの近辺は品川湾があった関係で、幕末に重要な拠点となっていた。鳥羽・伏見の戦いに敗れた新撰組もここを訪れ、榎本武揚もここから五稜郭へ旅立っている。しかし実際にはたいした事件が起きたわけでもなく、桜田門外の変で水戸浪士が最後の宴を開いたという旅籠もあったが、今ではコンビニになっていたりする始末。歴史的価値に関しては乏しいと言わざるを得ない。
 ぶっちゃけ、若き日の龍馬が駆け抜けたというよりは、素通りしていった街と行った方が正しいのかもしれない。だが、そんなイチャモンは気にも留めず、立会川商店街は坂本龍馬をプッシュしまくる。その象徴が何といっても、駅前の公園にある坂本龍馬像だろう。ずいぶんと色鮮やかな銅像だなと思いきや、なんとプラスチック製。
 実は数年前に工事現場から大量の岩石が発掘されたので調査したところ、かつての砲台跡であったことが判明。しかも龍馬の故郷、高知からわざわざ運んできたらしいということで、わざわざ発掘した石を商店街のおじさんたちが高知市へ返しに行ったのだという。
 その時、偶然に立ち寄った料亭の庭に飾られていたのが、このプラスチック製の龍馬像だった。プラスチック製のものから、もっと立派な本物の銅像に作り替えるという、料亭の主人の話を聞いた商店街メンバーは、「捨てるくらいならば…」と譲り受けてきたのだという。実に取って付けたような、ほのぼのエピソードである。

 さて、次に向かったのは敷石が発掘されたという浜川砲台跡。
 行ってみると、水道局のポンプ場になっており、壁面には80年代風のファンシーな龍馬のイラストが描かれている。その手前にあるのが砲台跡らしい。看板には、若き日の龍馬がこの砲台の警備にあたったと書かれている。一応ゆかりはあるようだ。
 さすが龍馬ブームの真っ最中だけあって、こんな地味でパッとしない史跡にも、歴女(レキジョ)たちの姿が散見される。そして始まる高濃密度の幕末談義。さらに「キャー、カワイイ〜☆」という場違いな喚声まであがる。
 何の事はない、発掘されたと覚しき敷石が、碑のように積み重ねられているのだが、その中央にハートの石がポンと置かれているのだ。なんとなくハートに見えなくもない、その程度だ。しかし勝手に盛り上がった彼女たちは「中岡慎太郎似の彼氏ができますように!」と祈願して、去っていった。恋愛成就の御利益があるかどうかは定かでないが、本人たちが満足ならば、それで良いのだろう。

 立会川といえば、数年前にボラが大量発生してワイドショーで話題になった。その時には橋の名前を「ボラちゃん橋」に変え、「ボラちゃん音頭」まで作ったにも関わらず、翌年からはパッタリとボラは姿を現さなくなったという哀しい過去がある。今回の龍馬ブームこそは、しっかりチャンスを掴んで全国にその名を馳せていただきたい。
 大河ドラマの方では、いよいよ次回、黒船が来航するだけに、浜川砲台が登場するか否か!? 立会川が人気スポットに昇格するか否かも、そこに懸かっている。

(犬山秋彦 山口敏太郎事務所)

参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou

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