その後チームはこの回一気に逆転し、三浦ベイスターズは見事な白星を手にすることに成功。ヒーローとしてお立ち台に上がった楠本は「1球だったんですけどここに立たせていただいてうれしく思ってます」と謙遜しながら「スタジアム全体がすごいイケイケムードでしたし、打てるなっていう気持ちにさせてもらいながら打席に立つことができました」とナインを後押しするファンに感謝した。
今シーズン通算打率は.196と2割にも満たないが、得点圏打率となると.389に跳ね上がる。また代打に限ると打率は.318と高い数字をマーク。4日の試合でも、三浦大輔監督が5番でスタメン起用したスラッガー、ネフタリ・ソトに代えて楠本を打席に送ったことからも、ここぞの場面での信頼がうかがえる。
また指揮官が「よく準備をしてくれている」と称えていることを裏付けるように「アナリストの方と(石井)琢朗さんと(鈴木)尚典さんと話して、初球から狙ったボールが来たら思い切って行こうと思って打席に立ちました」と、初球から迷わずスイングできるよう、事前に頭を整理してから勝負の場に臨んでいると明かした。
無類の勝負強さについては「毎日練習を手伝っていただいている裏方さんもいますし、試合前にたくさん、こうピッチャーが来たらこうやって打ちに行くっていうアナリストさんのおかげでもあるので、ほんとにたくさんの人に支えられながら、いい打席を送れてるなと思います」と周囲のアドバイスを力に変えているようだ。
現在キャプテンとしてバリバリのスタメンとして活躍している佐野恵太も、代打の切り札からその座をつかんだ。天才的な感性と、巧みなバットコントロールが魅力の楠本泰史も、そのルートを着々と歩んでいるように見える。
写真・取材・文 / 萩原孝弘