今シーズン開幕してしばらくスタメンキャッチャーは、嶺井とともに、フレーミングと昨年からバッティングも好調な戸柱恭孝、フェルナンド・ロメロや上茶谷大河との相性のいい山本祐大らがスタメンマスクを代わる代わるかぶっていた。
しかし5月28日に戸柱がスタメン出場したのを最後に、翌日から6月22日まで18試合連続で嶺井に固定。交流戦は1試合を除きすべての試合でスタメンを張り、三浦大輔監督も「いいコンビネーション」と度々高評価するように、臨機応変な配球で投手陣を引っ張るとともに、打撃もまずまずで交流戦勝率5割で乗り切る原動力のひとつとなった。
7月に入ると東克樹、フェルナンド・ロメロには伊藤光、濱口遥大には戸柱などの起用もありスタメンは減少していったが、8月のチームの快進撃時に3回もお立ち台に上がるなど、インパクトの大きな活躍を見せ、ファンの喝采を浴びていた。
2018年の91試合出場から年々試合数を減らし続け、昨年はわずか36試合出場にとどまった。打率も.189に終わり、シーズン後半にはファーム生活も味わった。昨年の契約更改では「契約していただけるだけでありがたい」と控えめなコメントながら、オフには恒例のソフトバンクの松田宣浩らとともに自主トレで汗を流すなど鍛錬を続け、今シーズンは93試合と一気に出場機会が増加。ホームラン5本は自己最多に並び、打点30もキャリアハイと飛躍の年となった。
現在横須賀の球団施設「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」で行われている秋季練習先行期間でも、キャッチャーとしての基礎練習や木魚の音に合わせてのトスバッティングなど、厳しい練習をこなしている嶺井博希。FAは個人の権利だが、ルーキー時代のサヨナラ打、2016年のCS、ファイナルステージへ導く決勝打など記憶に残るプレーを演じる千両役者の残留宣言を、ファンは待ちわびている。
取材・文・写真 / 萩原孝弘