M-1では初代王者の中川家から錦鯉まで、17組のチャンピオンが誕生している。テレビやロケ、劇場や地元での活動続行ほか、軸足の置き所は千差万別。そんななか、芸人稼業以外でも好結果を生んでいるのは、10年の王者の笑い飯・哲夫だ。
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奈良県立奈良高等学校、関西学院大学文学部哲学科卒という学歴を生かして、20年から相愛大学で人文学部の客員教授を務めている。さらに、およそ8年前からは大阪府内で低価格で通える学習塾「寺子屋こやや」を経営。小学1年生から中学3年生まで40人前後の生徒を抱え、自らも無償で講師になる。
地元・奈良への還元も続行。奈良国立博物館の文化大使、奈良県桜井市の広報大使に就任。実家の畑では農業に勤しみ、20種類以上の野菜を育て、販売もしている。M-1王者史上、最も複数のサイドビジネスを軌道に乗せているといえよう。
20年の王者であるマヂカルラブリーの野田クリスタルも、副業が順調。哲夫と同じく、趣味に実益を兼ね備えた好例だ。
かねてゲームのプログラミングを独学で行っており、M-1と「R-1ぐらんぷり」(当時)をダブルで制した翌21年、Nintendo Switchから「スーパー野田ゲーPARTY」を発売。約10万本を超える大ヒットとなった。今年7月28日には、新作「スーパー野田ゲーWORLD」をリリース。これまでに、およそ20種類のゲーム開発に携わった。
同じく7月には、野田が立ち上げた都内新宿のパーソナルジム「クリスタルジム」が1周年を迎えた。元来、大の筋トレ好きだが、M-1優勝を機に多忙になり、鍛える時間を割けなくなった。そこで、所属する吉本興業、マッチョ仲間の芸人らの力を借りてジムを開設。コロナで苦しむ芸人の資金調達にも役立っている。
「特質を生かして増収につなげたM-1王者といえば、08年覇者のNON STYLEの石田明さん。かねて脚本や演出などで舞台を裏で支える側にも回っていましたが、この数年は、その年のM-1の漫才を理論的に分析する視点が評価されて、配信番組やラジオ、バラエティ番組、養成所の講師という仕事も増えました」(お笑い雑誌のフリーライター)
15年覇者のトレンディエンジェルの斎藤司は、美声を生かしてミュージカル「レ・ミゼラブル」(19年)のオーディションを自力で突破。声優の仕事にも幅を広げた。
およそ4カ月後には第18代新王者が誕生するM-1。その多才ぶりにも期待がかかる。
(伊藤由華)