CMは白鵬がタモリ、江口に「ネクタイを外した後のお酒はおいしいですね」と笑顔で語った後にグラスを傾けるという内容だが、注目が集まったのは白鵬のまげ姿。「あれ? 白鵬って確かもう引退したはずでは?」、「相撲に疎いからよく分からんが、現役退いたのに何でまだちょんまげなんだ?」と、まだまげを結っていることを不思議に思う視聴者が少なからず見受けられた。
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「相撲ファン以外の方はほとんど聞きなじみがないとは思われますが、引退力士は自身の家族や所属部屋の師匠・関係者などに鋏(はさみ)を入れてもらってまげを落とす『断髪式』を行うことが慣例で、式を迎えるまではまげをそのままにしておくことが一般的。今回注目を集めた白鵬も引退・親方転向自体は2021年9月場所後でしたが、まだ断髪式を終えていないためまげ姿のままということになります」(相撲ライター)
大正時代から慣例になったとされる断髪式だが、式を行うこと自体に基準や条件などは特に設けられていない。ただ、不祥事で引退を余儀なくされた力士の場合は、式自体を行わずに自主的に断髪を行うケースもある。
一方、白鵬のように関取として長く活躍した力士、具体的には関取(幕内・十両)を30場所以上務めた力士は、断髪式に横綱の綱締め実演や力士の取組といったプログラムを加えた「引退相撲」を両国国技館で行うことが可能となる。
東京場所(1、5、9月)後の土日に行うことが原則とされる国技館での引退相撲は、入場料などの収入が全て引退力士の懐に入るため、引退後に親方に転身する力士にとっては今後の活動資金を確保する意味でも重要度が高いとされている。それゆえ、通常は引退から半年~1年以内とそこまで時間を空けずに行われることがほとんどだ。
ただ、2020年から続く新型コロナ禍により、昨今は引退力士が引退相撲を行うまでに1年以上かかるケースが続出している。直近では5月場所後の同月28日に元関脇・豊ノ島(現井筒親方)、翌29日に元関脇・安美錦(現安治川親方)がそれぞれ国技館で引退相撲を行っているが、2020年4月引退の豊ノ島は約2年、2019年7月引退の安美錦は約3年の期間を要した。
開催日時の原則や世情も絡み、日程調整に苦労する元関取が相次いでいる引退相撲。今回注目を集めた白鵬も現時点では日程は決まっておらず、一部報道では2024年までずれ込むのではないかという見方もある。“まげ付き親方”からの脱却はもうしばらく先の話になりそうだ。
文 / 柴田雅人