美術館や博物館などの文化施設は学生が団体客として多く訪れる場所だ。今後は引率者の監督責任なども問われそうだ。何より美術作品の破損トラブルはかねてより起きてきた。
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今に始まったことではないケースとしては、1960年に起こった弥勒菩薩の指折り事件が挙げられるだろう。京都の広隆寺に展示されていた弥勒菩薩の右手薬指の第2関節から先が無くなり警察が捜査中に、京都大学法学部3回生だった20歳の学生が指先の破片を持って現れた。学生は像にキスをしようとしたところ、学生の顔が指先に触れ折れてしまったという。弥勒菩薩は国宝の第一号であったため、このニュースは海外でも報じられ話題となった。折れた指先の素材は失われなかったため、修復は行われている。
大学生が出品した美術作品が、死亡事故につながってしまったケースもある。2016年11月6日、明治神宮外苑で行われていたデザイン系のアートイベント「TOKYO DESIGN WEEK」の会場で、大学生グループが美術作品として展示していたジャングルジムが炎上する火災事故が発生。光として当てていた投光器の白熱電球の熱により木くずから発火したと見られる。この事故で5歳の男の子が亡くなってしまった。主催者が事故後も展示を続けた点や、忘年会開催を計画していたことも問題となった。この事件では学生2人が重過失致死罪で起訴され、一審判決では執行猶予付きの有罪判決が下される。学生側は無罪を主張していたため控訴し、裁判は継続中だ。
2018年9月には、兵庫県神戸市の六甲山で行われていた「六甲ミーツ・アート芸術散歩2018」で笠井祐輔氏の作品が破壊される事件が発生。施錠された会場内に何者かが侵入して破壊が行われた悪質なものだ。作品は約1か月間をかけ修復され再展示がなされた。さらに夜間は作品を撤去し屋内に保管、防犯カメラ設置などの対策も取られた。
とはいっても、美術作品は必ずしも修復が可能なものばかりとは限らない。やはり、破損は絶対にあってはならない重大な問題だと言えるだろう。