3月25日に兵庫県神戸市にオープンした「こども本の森 神戸」には、壁一面の高さ約9メートルの本棚があり、高い部分にはダミーの本を並べる設計がなされている。この構造が「本来の図書の収蔵面積を無駄にしている」といった批判を集めてしまった。同様の構造の棚では、今年2月にオープンした東京都中野区の中野東図書館でも批判が生じている。
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安藤氏の建築は、コンクリート打ちっぱなしをベースとするシンプルな仕様が特徴だ。デザインを突き詰めすぎるあまりに、使い勝手の悪さを生み出してしまうのものが少なくない。
安藤氏の代表的な建築物と言えば、大阪府茨木市にある茨木春日丘教会の礼拝堂、通称「光の教会」が知られる。コンクリート打ちっぱなしに十字架の窓ガラスが取り付けられており、そこから光が入るようになっている。当初の計画では十字架にはガラスを付ける予定もなかったというから驚きだ。
それでもコンクリートが打ちっぱなしなので、夏は暑く冬は寒いと言われている。さらに入り込む光の量も少ないため、全体的に薄暗いようだ。もちろん、そこには暗闇と光を対比させる安藤氏の芸術性に基づく建築意図はあるのだろうが、不便な側面があるのは否めない。
東京都文京区にある東京大学の大学院情報学環・福武ホールも、雨どいが設置されていないため、雨が降ると、そのまま外階段などに流れ込んでしまうという。
また、東京都渋谷区の渋谷駅は乗り換えが不便な「ダンジョン駅」として知られる。この駅の設計を手がけたのも安藤氏だ。2008年6月の地下鉄副都心線の開業に伴い、東急東横線が地上から地下5階に移動となり、JR線との乗り換えに時間がかかるようになった。これは仕方ないとしても、駅の中に安藤氏が巨大なオブジェを配置したため、移動に余計に時間がかかると言われている。利便性よりもデザインを優先した結果、不便を招いてしまった形だ。
もちろん、安藤氏の建築の背景には意図がある。ネット上では「安藤忠雄はそもそも過ごしやすい建物なんか作らない、むしろ不便な建物を作るみたいなことを最初から言うてたからな」「不便さが生む豊かさもある」といった声も聞かれる。デザインを取るのか、利便性を優先するのかは難しい課題ではあるだろう。