「内山(壮真)クン、あそこでバックスクリーン放り込むんだからね。最後の村上(宗隆)クンも。あそこで打つんだから、素晴らしいですよ」
相手のヤクルト選手しきりに褒めていた。
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「あそこ」とは、独特の緊張感に包まれていた場面のこと。チャンスとピンチのことだ。同日のインタビューでは、この言葉が繰り返し使われていた。
8回裏、2死走者無しで代打登場した内山は、前イニングで日本ハム打線を封じ込めたチームの勢いをそのままバットに乗せ、同点ホームラン。村上は延長戦の緊迫感の中、サヨナラ2ランを放った。
現役時代の新庄監督はその独特の緊張を楽しみ、無類の勝負強さを発揮していた。勝敗を決める“あそこ”を、モノにできる力が若い日本ハム選手には養われていないわけだ。
「新庄監督と言えば、敬遠球を打ち返してサヨナラ勝ちした試合も有名です。当時、敬遠球を打つ練習もしていたんですから」(ベテラン記者)
試合後にヤクルト選手を称賛したことだが、見方を変えれば、延長10回表の自軍の攻撃を悔やんでいたとも解釈できる。
無死満塁、絶好のチャンスだった。だが、4番・清宮幸太郎、5番・万波中正、6番・宇佐見真吾が凡退し、1点も挙げることができなかったのだ。
「打順はほぼ日替わり。新庄監督は勝敗に関係なく、その日の試合映像を何度も見直し、ギリギリまで打順を考えています」(球界関係者)
「清宮の4番」は、4月21日以来。4番抜てきの理由を聞かれ、「なんか、神宮、慣れているらしいんじゃない?」と返し、笑いを誘った。
確かに、清宮は早実時代、この神宮球場で何度も試合をしてきた。しかし、続けて、「あそこで打てるような選手になってくれないと成長しないって思うから」とも語っていた。
4番抜てきは成長を促すためだった。「冗談」を先に言わなかったら、本人不在のお説教となっていただろう。
マスメディアを介して「監督の気持ち」を知らせ、発奮させる方法もあるが、新庄監督はそういうやり方を好まない。
「清宮は5月5日の楽天戦で、プロ初となる『1試合2本塁打』を放ちました。翌6日以降、清宮が使われなかったのは、1試合だけ。新庄監督は清宮をなんとかしてやりたいの一心です」(前出・同)
新庄監督は「送りバント」の場面でも「打て!」の強行サインを出すことも多い。チーム全体が若く、好機に強いバッターを育てていくためだが、「オレが試合を決めてやる」という選手側の気概が伝わって来ないのだ。個人的な感想なので間違っているかもしれないが、「打て!」の愛情に応える自信がまだないのでは?
「あそこ」をモノにする精神力を養うには“場慣れ”も必要だ。
清宮たちが独特の緊張感を楽しめるようになれば、最下位脱出も簡単なのだが。(スポーツライター・飯山満)