これは昭和50年代(1975~1984年)に発生したある家庭内殺人の話である。
ある日の深夜、都内の一等地にある豪邸で当時69歳の女性Aさんが頭、顔、首などから血を流してリビングで倒れているのを家主である夫が見つけた。
Aさんは「孫にやられた」と言い残して気を失い、病院へ搬送されたがしばらくして死亡が確認された。
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現場には血の付いたかなづちや果物ナイフ、キリなどが落ちており、さまざまな凶器を用いてAさんを痛めつけたようだ。
すぐに警察が駆け付けたが、Aさんの言い残した「孫にやられた」という言葉通り、男子高校1年、16歳の孫Bくんの姿だけがなかった。
行方は他の家族にもわからなかったが、翌朝Aさんが殺された現場から2キロほど離れた10階建てのビルの下で少年とぼしき飛び降り死体が発見され、それがBくんであることが判明。Bくんは祖母のAさんを殺害した後、ビルから飛び降りてしまったものと思われる。
一体、2人に何があったのか……。
Bくんは都内の有名高校に通う優等生だったが、事件の1年前に両親が離婚。父は家を出てBくんは母親と、母方の祖父母と暮らすことになった。
Bくんの祖父、つまりAさんの夫は現役の大学教授で学問に対し非常に厳格であった。そのためBくんにも「将来は研究の道へ進んでほしい」という思いが強く、祖母のAさんはBくんに対し勉強を強要する日々が続いていた。
Bくんは最初は祖母の言うことを聞いていたが、次第にストレスがたまり「クソババア」と書いた紙を壁に貼り付けるなど精神が壊れていった。
Aさんは勉強を強要することは孫への「愛情」と信じていたようだが、当人としては「おせっかい」と感じていたようで、お互いの意思疎通ができていなかったことが悲劇の始まりだったようだ。
犯人の自殺という最悪の結末を迎えた少年犯罪事件であった。