Aさんがいなくなったことに気づいたのは、25日午前5時半過ぎ。前日から泊まりに来ていた友達姉妹2人が、一緒に寝ていたはずのAさんがいなくなったことに気づき、Aさんの両親に知らせた。
Aさんの父親は建築会社を経営しており、自宅は事務所を兼ねた大きな2階建ての建物。Aさんの両親と祖父母、そして長男と次男、父親の姪とその交際相手である従業員Bの計9人が同じ屋根の下で暮らしていた。
騒ぎを聞きつけた家族はすぐに辺り一帯を捜索。しかし、Aさんの姿はどこにも見つからず、警察に通報することになった。
一体、Aさんはどこに消えたのか。Aさんが最後に確認されたのは、24日の午後10時30分。母親がAさんと友達の様子を窺いに部屋を訪れ、寝ている3人を確認したという。その後、1人で夜に家を出たのだろうか?家族によると、Aさんは非常に怖がりで、夜中に1人でトイレに行くことができなかったそうだ。さらに、どこかに出かける際には必ずメモを残していたといい、勝手にそれも夜中に出かけることは考えにくいという。
警察は事件から1か月の間に、述べ4000人近くを動員してAさんの行方を追った。捜索範囲は半径6キロにも及び、徹底した聞き込み捜査も行われた。現場となった自宅では警察犬を導入してAさんの痕跡を探したものの、一階にある玄関先で警察犬の反応は途絶えたという。自宅からは当時住んでいた人物以外の指紋は発見されず、外部から侵入した形跡も見つからなかった。
捜索が行き詰まる中、自宅に住んでいた人物の1人が捜査線上に浮かび上がる。姪の交際相手Bだ。実は彼、Aさんが失踪した24日から25日にかけて不審な行動が目撃されていた。母親がAさん達を確認した後、Bが何も告げずに外出した。この時点ではコンビニに出かけたのだろうと母親は考え、気にも留めなかった。しばらくすると、玄関の閉まる音と階段を上がる音がしたため、母親はBが帰宅したのだろうと思った。しかし、25日の午前2時、祖父母がカラオケスナックから帰宅したところ、Bが家にいないことに気づく。祖父母は父親にBがいないことを伝えたが、父親は「明日聞く」といってそのまま寝た。そして、夜が明けた。Bが帰宅したのは午前6時30分だった。
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警察は被疑者としてBから事情聴取を行った。Bによると、24日午後10時30分頃、友人に電話するために公衆電話に向かったという。その後、自分の車を使って郡山市まで行こうとしたが、バッテリーが上がっていたため断念。その後、周辺をうろつき時間をつぶしていたそうだ。列車で行こうと考え、最寄の船引駅に向かったものの、その時点で最終列車が出発済であり、午後11時過ぎに駅前のタクシー広場でタクシーを拾い、郡山駅に向かったという。警察が調べたところ、実際にBを乗せたというタクシー運転手が見つかった。その後、郡山駅に着いたBだが、友人に電話しても待ち合わせ場所に来てくれなかったため、近くのデパートにあるベンチで仮眠を取った。そして始発列車で帰ってきたという。
なぜ夜中に郡山市に向かったのか。Bによれば、24日に親友から突然電話で「精神に異常をきたした」と伝えられたという。そして、「親友とは別の友人」から親友の状態を聞くために、郡山で待ち合わせしたというのだ。結局、その友人は寝過ごしたため、待ち合わせ場所に来なかったという。後に、Bと待ち合わせをしたとされる友人が警察に事情聴取を受けたが、「そんな約束はしていない」と述べている。Bのいた船引駅からタクシーで向かった郡山駅までは約22㎞、当時のタクシー料金で7000円近くかかったそうだ。郡山駅近くのデパート前でBに声をかけたという客引きが見つかったことから、移動した事実は間違いない。しかし、待ち合わせが嘘だとしたら、何のために金をかけて移動したのだろうか。
結局、Bが事件に関与した事実は確認されなかったため、2週間の勾留の後に釈放。Aさん宅に戻り、給料を受け取った後に退職し実家へ帰っていったそうだ。
その後、事件に進展は見られないまま、2021年4月現在もAさんの行方は分かっていない。事件から2か月後、Aさんの母親は当日宿泊していた姉妹から「夜12時に何者かがAさんを優しい声で呼んでいた」という証言を得る。事件後の警察による事情聴取ではショックのせいか、警察を怖がったのか何も答えられなかったという。母親は警察にこの証言を伝えたが相手にされなかった。
自宅から忽然と姿を消したAさんは、一体どこに消えたのか。