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森前会長だけじゃない? 自分にもあるかもしれない「無意識の偏見」に気づき、改善するには

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森喜朗

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を務めていた森喜朗氏が12日、合同懇談会に出席し、女性蔑視発言の責任を取る形で辞任を表明した。

 きっかけの一つとなった「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」という発言は、女性は男性と比較して話が長いという偏見に基づいた認識であり、「過剰な一般化」または「ラベリング(レッテル貼り)」といった認知の歪みのひとつとみられる。また、森氏は発言の釈明をする中で、「解釈の仕方」「意図的な報道」など、自分は女性蔑視をしたつもりはなく、捉える側に問題があるとして自らの認識の誤りを認めなかったことから、女性蔑視発言は「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」が原因とみることができる。

 アンコンシャス・バイアスとは、偏見の中でも特に自覚がないもののことをいい、女性蔑視に限らず、「高齢者は頭が固い」「男は泣いたらいけない」など、多かれ少なかれ誰もが持っているものだ。無意識の偏見は、親の教育や時代背景といった生育環境に基づく経験や知識、価値観などに基づいて形成され、無意識のうちに維持される。そして、繰り返しイメージされる度に定着していく。無意識の偏見は、膨大な記憶量や思考の情報処理速度を高めるための役割も担っていると考えられている。

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 これは森氏に限ったことではなく、自分自身の無意識の偏見にはどうすれば気づくことができるのだろうか。ハッキリ他人から指摘されれば認識することもできるが、その機会がない場合はセルフチェックで気づくこともできる。例えば、会話の中で自分が少数派であることが分かるなど、感覚のズレから分かることもある。自分で無意識の偏見に気づくためには、日々の生活の中でささいな違和感を見逃さないようにし、「これは偏見ではないか?」と意識的に注意しておくとよい。偏見の多くは、「普通は」「絶対に」「常識的に」といった表現とともに出てくるため、これらのキーワードを用いた話の内容には特に注意する必要がある。

 無意識の偏見を改善するためには、認識の誤りに気づいた時点で、より正しい認識となるように方向を修正する必要がある。もしも自分の考えが偏見かどうか判断に迷う場合は、誰かに意見を聞いてみるのもいいだろう。その際、聞いた相手の認識も誤っている場合が考えられる時には、複数人に聞く、ネットや文献で調べるなど、より多くの情報を参考にするとよい。

 偏見のイメージは長く定着しているほど自動思考化している可能性が高く、改善に時間を必要とする場合がある。しかし、一度気づいて改善しようと考えたことに関しては、そのことに立ち会う度に自分の偏見であることを意識的に思い出すようにしていれば、そのうちに方向を修正することができる。そして、より効率よく偏見を改善するためには、「批判されるから表に出さないようにする」のではなく、根本的な認識の誤りを認め、受け入れて納得した上で認識を変化させることがポイントである。

 人には自尊心を保とうとする傾向があり、「自分は正しい」という前提のもとで日常を過ごしているため、他人からの指摘に対して、あるいは改善しなければいけない点に気づいた時に抵抗を感じやすいものだ。しかし、そのことを知った上で、もしかすると自分の認識が間違っているかもしれないと常に意識していれば、他人からの指摘や改善点に対して柔軟に対応しやすくなり、新たな偏見も持ちにくくなる。

文:心理カウンセラー  吉田明日香

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