「えっ!?」
これは、野球・日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督が中日キャンプを視察した際、大野雄大投手と交わした会話。横浜スタジアムは東京五輪・野球競技の試合会場(第2戦以降)だ。稲葉監督は大野に“代表当確”と先発起用を告げたのである。
もっとも、東京五輪は新型コロナウイルスの影響などで、開催そのものが危ぶまれている。各競技関係者は「やる」方向で調整するだけだが、プロ野球界にも“現実的な意見”が囁かれている。
「もし中止になったら、大幅な日程変更は避けられません」(球界関係者)
プロ野球は7月15日から約1か月間、ペナントレースを中断させる。途中中断は本来の五輪イヤーだった2020年にも決めていた。しかし、中断を前提とした試合スケジュールには“無理”があり、全球団の監督が「投手陣のやり繰り、特に中継ぎ投手の体力が心配」と頭を抱えていた。
「侍ジャパンに選出されなかった大半の選手は、『1か月間の休業』となります。投手に限らず、選手は調整が難しい。スロースターターなベテランは調子が上向きになってきたと思ったら休業ですから」(前出・同)
大野は昨季、「10完投」と驚異的なスタミナを見せている。「大野の投げる日は救援陣のリフレッシュ休暇」という捉え方もされていた。
「本当に東京五輪が中止されれば、NPBは日程を組み直します。状況次第では球場が確保できない日も出てきそう。地方遠征が増えることになるのではないか…」(ベテラン記者)
開幕戦は3月26日。ペナントレースがスタートしてから東京五輪に関する発表があった場合、混乱は免れない。地方遠征が決まれば、公共交通機関、宿泊ホテルを押さえるのは各球団の仕事だ。フロントスタッフも負担の多いシーズンとなりそうだ。
侍ジャパンの主要試合を託された大野だが、気になる情報も交錯している。
「過去2年、大野は登板過多の傾向にあり、蓄積疲労が心配されています。『投げたがり』なので、キャンプインするまではそんな声は出ていませんでしたが、今年はいつになくスローペースです。キャンプ中盤に入ってもペースは一向に上がりません」(前出・同)
沢村賞投手・大野の代表入りは与田監督も想定していたはず。その大野を故障させずにペナントレース本番を迎えることが重要となってくるが、「例年以上のスロー調整」と聞くと、蓄積疲労は周囲の想像以上なのかもしれない。
代表チームに招集される選手は多かれ少なかれ、何か言われている。しかし、「横浜スタジアム」と具体的に言われたのは大野だけだ。中日は球団創設85周年を迎え、今年はかなり強く優勝を意識している。中日首脳陣のホンネは、「ウチのエースに余計なプレッシャーを掛けないでくれ」ではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)