第1クール最終日の2月4日、阪神が紅白戦を行った。注目は、4球団競合の末に獲得した佐藤輝明選手(近大)。白組の1番・左翼で出場したが、3打数ノーヒット。キャンプ序盤のこの時期、ヒットの有無は関係ない。佐藤を視察した阪神OB、プロ野球解説者は絶賛していた。しかし、矢野監督、佐藤本人の「コメントなし」というのがどうも気になる。
「紅白戦前の午前中、侍ジャパンの稲葉篤紀監督が阪神キャンプを表敬訪問し、阪神首脳陣とも談笑していました。佐藤への期待はもちろん、『代表候補に入ってくる』と語っていました」(現地入りした取材陣の一人)
関係者によれば、稲葉代表監督はグラウンド入りする前にも佐藤の話をしていたという。期待していることは間違いないが、紅白戦は観戦していない。「スケジュールの都合」とのことだが、本当に期待しているのなら、1打席でも見ておきたいはずだが…。
個人的には、第2打席のファーストゴロに驚いた。打球にスピードがあった。ソフトバンクの柳田にも引けを取らなかった。
「味方のピッチャーも変化球を投げすぎ。裏を返せば、マウンドから対峙した時に『佐藤の貫禄』を感じ、真っ直ぐ一本では勝負できないと察したんでしょう」
プロ野球解説者の一人がそう評していた。
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佐藤の将来性は間違いないようだが、冷静な意見も聞かれた。
「打ち損じのファールに長所と短所がある。長所は、2ストライク後、コンパクトにスイングして空振りしないようにしていました。この辺はさすが。でも、ファールの打球がみんな右方向に飛んでいました。体の開きが早すぎるんです。今のままでは通用しない」(球界関係者)
確かに、バットスイングの後、打ち終わった後、一塁方向を向いていた。
実戦を経て、佐藤も課題を見えてきたはず。試合後、「時間がない」とのことで阪神スタッフは佐藤から直接話を聞く機会を設けてはくれなかった。
「試合後に練習が組まれており、時間がなかったのは本当です。でも、新人の売り出しも兼ねて、代表質問だけを受ける方法もあります。ドラフト後の佐藤は各メディアの取材にも丁寧に応じており、その言動もしっかりしていました。球団が喋らせたくなかったのでしょう」(在阪記者)
矢野監督もコメントを出していない。初の紅白戦に関する総評もほとんど喋っていない。
「紅白戦について喋れば、佐藤に関する質問も受けることになります。矢野監督がニンマリしていたのは、新人捕手の榮枝裕貴(立命館大)のプレーです。二塁送球で肩の強いところも見せてくれましたし、ヒットも放っています。この調子でいけば、間違いないなく、一軍で使っていくはず」(前出・関係者)
課題の見えてきた佐藤に対し、阪神首脳陣は特に指導はしていなかった。メディアのいないところで助言していたのかもしれないが、佐藤の露出を抑えようとしている雰囲気も感じられた。
「佐藤の露出度が上がれば、弱点を見つけられてしまうリスクも高まります」(前出・同)
「隠す」ということは、佐藤を一軍で起用していくつもりであり、他球団も警戒しているのだろう。新人が活躍すれば、チームも勢いづく。今年のトラは「佐藤次第」と言えそうだ。(スポーツライター・飯山満)