阪神・藤浪晋太郎投手が2日続けてブルペン入りし、新投球を披露した。一連の投球動作に“ワンポイント”が加えられた。左足を上げて踏み込むまでの間に、一瞬だが、三塁方向を見ていた。
練習後、「しっかり、頭が残って。そのあたりは、今年の課題かなと思っているので」とその効果を語っていたが、前日は「三塁方向を一瞬見る」投げ方はしていない。チーム関係者によれば、前日夕方の練習中にひらめいたのだそうだ。
藤浪と言えば、今季から両腕を大きく振りかぶる「ワインドアップ投法」に変更している。厳密には、大阪桐蔭時代、プロ1年目までの投げ方に戻したのだが、
「大きく振りかぶる分、ストレートの威力がさらに増してきました。でも、動作が大きい分、ボールの握りやクセを見破られやすい」(プロ野球解説者)
と、プラスとマイナスの両面を秘めている。
近年では、クセを見破られないようにするため、走者のいない場面でもセットポジションで投げる投手の方が多くなっている。
>>阪神の16年ぶりVはチェンの好不調次第か 矢野監督は扱いに苦悩? 藤浪のローテ脱落説も浮上<<
キャンプ2日目に披露した新フォームだが、「調整の一環、一時的なもの」という声と、このまま試合本番でも使うとの両方の指摘が聞かれた。
「普通のワインドアップ投法と、三塁方向を見てから投げるフォームの両方を試していき、本人がシックリ行く方を本番で使うようです」(球界関係者)
近年の藤浪は毎年のように投球フォームを変えている。腕の角度を下げ、スリークオーター気味に投げていた年もあれば、左足をほとんど上げない投げ方もしていたシーズンもあった。
「去年までは自信がなく、迷っていた感じでした。今年は投げる時に頭が前に突っ込まないようにするとか、ちゃんと目的を持っていました。メンタル的には心配ないと思いますが」(前出・同)
そんな藤浪に対する首脳陣の反応も興味深いものがあった。
矢野燿大監督は、前日のキャンプ初日に見せたワインドアップ投法について、「カッコイイ」とひと言。1月31日の全体ミーティングで「カッコ良く!」と、矢野監督流の言い回しでチームに喝を入れた。それを用いて藤浪を評したわけだが、他投手に関するコメントとはあまりにも違いすぎるのだ。
藤浪が三塁側を一瞬見る新投法を披露したのと同じ2日、ドラフト8位ルーキーの石井大智投手(四国IL高知出身)がブルペン入りした。新人はキャンプでアピールしてくるものだが、矢野監督は「俺も(現役時代は)キャッチャーやけど、(捕手目線で見て)十分通用するボールを投げている!」と興奮気味に話していた。また、歩み寄って自らアドバイスを送る場面も見られた。
「阪神の首脳陣は、藤浪について多くを語ろうとしません。調整方法も全て本人に任せています」(在阪記者)
今年の阪神はチェン・ウェイン、ラウル・アルカンタラなど外国人投手を補強し、先発投手層が一気に厚くなった。しかし、虎ファンは外国人投手が好投するよりも、藤浪がシーズンを通じて先発で活躍するところが見たいと思っている。唯我独尊。なんとなくだが、藤浪が浮いている感がしないでもない。(スポーツライター・飯山満)