「まだ、何も発表がありません。ギリギリまで交渉するつもりなんでしょう」
米東部時間・1月7日午後4時半(日本時間/8日午前6時半)、巨人・菅野智之投手の代理人であるジョエル・ウルフ氏の動向を追っていた米国人ライターがそう答えた。
新型コロナウイルス禍により、今オフの米球界のフリーエージェント市場も大きな影響を受けた。まず、各球団の編成トップ、代理人が一堂に集まるウィンターミーティングは中止された。そのため、交渉はオンラインや電話となり、代理人は“空気”が読めず、球団側との駆け引きができなかった。球団、代理人双方とも、いったん、持ち帰って改めて返答するとしたため、全ての交渉が遅延したそうだ。
「オンラインが菅野の交渉を遅延させた一因と目されていました。交渉期限の1月8日午前7時(日本時間)が近づくにつれ、菊池雄星(マリナーズ)が渡米した時の『4年総額5600万ドル(約57億7000万円)』以上という、金銭的な話も出てきましたが」(スポーツ紙記者)
プロにとって、メンツ、評価はカネだ。しかし、「菊池以上でなければダメ」とする情報を詳しく聞いてみると、今オフの異常事態がまた一つ見えてきた。
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「有原航平がレンジャーズと2年620万ドル(約6億4000万円)で、菅野よりも早く契約にこぎ着けました。ここで、日本人投手に対する相場が高騰したというか…」(米国人ライター)
菅野と有原は、代理人が同じだ。巨人に未練を残した菅野と、米球界挑戦を熱望していた有原とでは交渉の内容も異なる。「行きたい!」と強く思っている有原が先に決まるのは当然の流れだが、レンジャーズが条件提示してくる前に、別球団のアジア担当スカウトがアタックしていたそうだ。
「パイレーツのスカウトが有原に猛アタックし、有原の評価が一気に上がったんです。大半の米球団はマイナー契約を交わし、キャンプン、オープン戦を見てからメジャー昇格を検討するとしていましたが」(前出・同)
その後、好条件で有原はレンジャーズと契約した。「マイナー契約もあり得る」と目されていた有原が好条件で契約できたのも、パイレーツの高額提示が影響しているという。しかし同時に、「菅野は安売りできない」との“空気”が代理人事務所にも広がり始めた。
「新型コロナウイルスは21年シーズンの日程にも影響を及ぼしそうなので、たとえ菅野であっても、メジャーリーグでまだ1球も投げていない投手にエース級の金額提示はできません」(前出・同)
また、安価で菅野を契約させてしまえば、代理人がその手腕を疑われてしまう。これも、交渉遅延と決裂につながったようだ。
交渉リミットである日本時間の1月8日午前7時を少し過ぎたころ、代理人のオフィスがあるロサンゼルスの各メディアが「交渉決裂の模様」と報じた。菅野残留は原辰徳監督にとって朗報かもしれないが…。
そう言えば、菅野はプロ入りも“ドラフト浪人”で1年遅れだった。今回のメジャー挑戦もそうだが、「持っていないオトコ」なのかもしれない。(スポーツライター・飯山満)