少し話は遡るが、12月6日に中日の球団幹部が阪神を解雇された“元中日選手・福留”について聞かれ、「オファーを出すのは間違いありません」と答えた。匿名を条件としたコメントだが、この時点で古巣復帰は確実となり、翌7日、加藤宏幸球団代表が「もし来てくれるのなら」と前置きしつつも、それを認めた。
回りくどい言い方になったのは、12球団合同トライアウトが終了するまで自由契約選手との交渉ができない規則になっていたからだが、「一番期待するのは勝負どころでの一本」と、具体的な起用法も明かしていた。代打だ。しかし、同時に“選手以外のこと”もやらなければならない。
「左も代打陣が手薄なのは本当です。でも、打撃コーチの顔ぶれを見てくださいよ。村上、栗原両打撃コーチ、パウエル巡回打撃コーチがいますが、全員、右打ちです。京田など左打ちの中堅、若手の指導役も任せることになると思います」(プロ野球解説者)
中日はベテランのプライドに配慮したチームでもある。多少の例外はあったが、岩瀬仁紀、山本昌、荒木雅博、和田一浩といったベテランたちには名球会入りの節目、あるいは、本人が納得するまでの“完全燃焼の機会”を与えてきた。2013年以降、2ケタ勝利から遠ざかっていた吉見一起に対しても、復活を信じて待った(20年シーズン引退)。「楽天イーグルスの顔」でもあった山崎武司も呼び戻している。
「長くチームに貢献してくれたベテランを大切にする球団です。他球団に移籍した山崎も呼び戻しています」(球界関係者)
OBを大切にするのは、監督、コーチを託す将来の指導者候補がいなくなるのを恐れてのことだ。
「来季、球団創設85周年を迎えます。与田剛監督も『10季ぶりの優勝』のプレッシャーを掛けられています」(名古屋在住記者)
それだけ優勝から遠ざかってしまったのも、福留を呼び戻した理由だという。
「福留が選手を引っ張っていくことになりそうです。阪神時代も外様でありながら主将を任されたほど」(前出・プロ野球解説者)
2011年の優勝を知る選手は、もう数える程度しか残っていないのだ。僅差での首位争いが続けば、最後は“経験”が物を言う。07年の日本一を経験した一人でもあり、99年からの中日在籍の9年間で3度のリーグ優勝を経験した。
「来季は44歳。レギュラーを獲るほどの活躍は厳しい」(前出・同)
20年の成績だが、打率1割5分4厘、本塁打1、打点12。43試合に出場したが、スタメンは15試合しかない。104試合に出場した19年と比べると、年齢的な衰えは明らかだ。
「ずっと、レギュラーでやってきた選手です。4打席に立って結果を残すスタメンと、一発勝負の代打では精神的にも大きく違います。福留自身も変わらなければ」(前出・同)
20年シーズン、ベンチから味方外野手の守備位置を指示する場面も見られた。攻守交代で指示された外野手が帰ってくるなり、厳しい表情で注意もしていた。中日では“コーチ兼任”となるだろう。近い将来、監督となって阪神にリベンジを挑むのでは…。(スポーツライター・飯山満)