昨年ベイスターズは、3人が月間MVPに輝いた。5月の投手部門ではエース今永昇太が、4勝1敗、防御率1.78、クオリティスタート率100%と圧巻の内容で受賞。しかし6月は一転、2勝1敗、防御率4.56、クオリティスタート率も50%と数字を落とした。
7月は打者部門でホセ・ロペスが受賞。24試合で28打点、8ホームランのうち2本がグランドスラム。殊勲打も8回を数え、ヒーローインタビューに“いつも上がっている”印象さえあるほどだった。8月に入ると調子を落とし、打率.217、ホームラン2本、打点も9と冴えない成績になってしまった。
同じ7月の投手部門では、ストッパー・山崎康晃が受賞。12試合に登板し1勝7セーブ、防御率は0.75と無双状態でチームを上昇気流に乗せる活躍。“夏に弱い”との課題を克服したかに見えたが、8月は7セーブをマークしたものの、サヨナラホームランを浴びるなど悪い印象もあり、防御率も4.50と数字を下げてしまった。
昨年受賞の3人とも翌月の数字は芳しくなく、MVP受賞者に限らずとも絶好調を維持することはなかなか難儀だ。しかし佐野は今シーズンの開幕当初の6月は打率.351、7月.330と波がなく、ここまで調子が安定している。「1日の終わりにその日の反省をしっかりして、次の日に向けて準備をする作業」を毎日のルーティーンワークとし「調子を修正したり、良いところは維持できるように」と考えながら試合後、横浜スタジアムのライト付近で素振りを繰り返す。その姿から慢心はみじんも感じられない。スタミナ切れが心配される夏場にもスイングは鋭さを増し、長打も増えている点からも心配は杞憂に終わりそうだ。
自身の首位打者も見えてくる状況には目もくれず「しっかりと打点を稼いで、チームの勝利に貢献したい」と言い切る頼れるキャプテン。44番の背中は日に日に大きく見えてきた。
写真・取材・文 / 萩原孝弘