ロックダウンされた3月中旬から4月にかけてこそ、多くの人が自宅にこもり、通りで人を見かけることはほぼなかった。ここ数日のドイツ国内の感染者数はドイツの総人口8302万人に対し、4-500人前後。4月に入ってからは数千人単位で感染者が増える日々が続いていたため、それに比べると減ってはいるが、感染者がいないわけではない。それにも関わらず、7月に入ってからというもの、ドイツでは多くの人が外出し、すっかり新型コロナウイルスが流行する前の生活が戻りつつある。
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「ドイツでは、最近はコロナが『落ち着いてきた』というメディアがほとんどです。それに安心しているのか、コロナを怖がっている人はほとんどいませんね。デパートなども再びオープンしていますが、現地メディアによると、国民の6割がロックダウンが緩和されたことに賛成しているといいます。コロナに翻弄されず、できるだけ普通の生活をしていこうという人が多いですね」(ドイツ在住日本人)
そういった雰囲気もあってか、飲食店は例年通りの賑わいを見せている。飲食店では座席を1.5メートル以上離さなければならないという決まりがあり、店の入り口などには座席を1.5メートル離す対応を取っているという張り紙がされているが、実際は守られていないことが多い。客も気にせず食事やお茶を楽しんでいるようだ。
「飲食店ではマスクの着用についても引き続き義務となっています。マスクについてはかなり厳しく、客はマスクがないと入店させてもらえませんが、マスクをしていればいいという感じで、きちんと装着されているかについては気にされていません。店員でさえ、マスクはしているものの、あごの方に下がっていて、その状態でオーダーを取る光景も珍しくはないですね」(前出・同)
また、ドイツでも日本と同様に、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性がある場合に通知を受け取ることができるアプリケーションが、6月16日にリリースされた。しかし、実際に使っている人は少ないようだ。
ドイツを中心とした様々なデータを収集する機関『Statista』の発表よると、アプリの総ダウンロード数は約1540万件(7月9日時点)だという。日本は6月19日にアプリがリリースされ、『日経クロステック』(日経BP社)によると約582万件(7月6日午後5時時点)がダウンロードされたそうだ。ドイツの方が圧倒的にダウンロード数は多いが、ドイツで使っている人を見たことがないという声もある。
「私の周りではダウンロードをしているものの、使っている人は見たことがないです。ドイツ人は慎重な人が多いからか、個人情報が漏れる心配をしているようですね。政府はHPなどで安全性をアピールしていますが、『コロナより個人情報の漏洩の方が怖い』という人も多いです。日本の感染者数はドイツに比べたらまだまだ少ないですが、アプリを導入して警戒心を高め、マスクをしていない人を見たら白い目で見られたり、映画館やライブの人数を制限しているのを聞くと、暮らしにくいなという印象を受けます。しかし一方で、緩和と同時にたがが外れ大人数で集まっているドイツ人を見ると、周りの目を気にすることができるのは悪いことではなく、むしろ日本人のいいところだなとつくづく思います」(前出・同)
新型コロナウイルスの収束の目処が立たない状態で経済活動を再開させたドイツ。新型コロナウイルスの恐怖は人々の間で薄れつつあるようだが、今後、再び感染者数が激増しないことを願うばかりだ。
記事内の引用について
「Anzahl der Downloads der Corona-Warn-App über den Apple App Store und den Google Play Store in Deutschland im Juli 2020」(Statista)より
https://de.statista.com/statistik/daten/studie/1125951/umfrage/downloads-der-corona-warn-app/
「接触確認アプリ「6割普及は正直かなり厳しい」、有識者委員が語る」(日経クロステック)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01353/070600002/