しかし5月に入り、州ごとに外出禁止令が少しずつ緩和され、美術館や図書館が開館。レストランも人数制限を設けることや1.5メートルの距離を取って客が座ること、営業時間を午後8時までにすることなどを条件にオープンし始めた。ロックダウン後は、同居人以外の人と接触することが禁じられ、4月末に同じ家に住んでいる人にプラスして1人のみと接触することが許可されていたが、この度、緩和が見直され、同じ家に住んでいない他の世帯の人とも会うことが許可されている。小学校などは全員が少しずつ学校に戻れるように調整中だ。
また、規制が緩和されたことで、50人までなら屋外で集会をすることも許可された。しかし許可されると、各地で完全な規制撤廃を求めるデモが起こった。特に感染者が多く、規制緩和に慎重な姿勢を見せていたバイエルン州では、数千人単位の人がデモに参加したという。
現地の報道によると、デモに参加した人は「我々は元の生活を取り戻す」というプラカードを掲げ、自由の権利を奪われることに抗議していたそうだ。ドイツでは、デモを行う時は、基本的には事前に各自治体に申請をしなければならず、この度行われたデモも、「50人以下の集まりであること」「マスクを着用すること」「社会的距離を保つこと」を事前に伝え、許可されていた。しかしデモが起こると、人がどんどん集まってきて警察も手に負えなくなったそうだ。
「バイエルン州の中でも一番人口が多いミュンヘンでは、最終的に3000人以上の人が集まってカオス状態だったそうです。社会的距離は保てず、ミュンヘンを拠点とするサッカーチーム、『バイエルン・ミュンヘン』の優勝パレードの時のようだと言う人もいましたね。最初は警察が注意をしていましたが、最後の方は諦めていたそうです。親に連れられ『学校に戻りたい』というプラガードを掲げた小さな子供もいました。これまでは在独日本人の多くがドイツ政府の対応を称賛していましたが、各地でデモが行われ始めたことに落胆し、日本に帰りたいと嘆き始めた在独日本人も少なくはありません」(ドイツ在住日本人)
しかし、こういったデモに対しては、ドイツ人の多くが冷ややかな目で見ており、ドイツ国内のネット上では「みんな自粛して頑張っているのに考えられない行動。彼らのせいで自粛期間がまた2、3か月延びる」「自己中心的すぎる行為。元の生活に戻りたいならそれなりの行動をしろ」「感染者がまた増えたら責任を取れるのか」などの声が挙がっている。
実際、規制が緩和されて以降、感染者数は微増しており、緩和がされたとは言え、慎重になる必要がありそうだ。
政府は「新たな感染者が、1週間で10万人あたり50人を超えた場合、該当地域には再び厳しい規制を設ける」と明言しているが、ドイツはこれからが正念場となるだろう。