ドイツ・バイエルン州で、新型コロナウイルスにより多くの死者を出したイタリアに向け、隣人が集まり、歌を歌っている動画が話題になっていると、海外ニュースサイト『Classic FM』が3月20日に報じた。同記事によると、近所の人、数人がそれぞれの家のバルコニーに座り、イタリアの軍歌民謡『さらば恋人よ(ベラ・チャオ)』を歌ったそうだ。動画は歌を歌ったうちの男性の一人がYouTubeに投稿したという。『さらば恋人よ』は、反ファシズムの讃歌として知られる歌で、第二次世界大戦中に自由の賛美歌として歌われていた。
YouTubeで公開されている動画では、冒頭で男性が、手元のメモを見ながらイタリア語で「私たちの親愛なるすべてのイタリア人へ。この困難な時期に私たちはあなたと共にあることを知ってほしいです。私たちはあなた方がバルコニーで一斉に歌を歌っている姿に感銘を受けました。だから、私たちはあなた方のために『さらば恋人よ』を歌います」と語っている。イタリアでは、新型コロナウイルスでの死亡者が激増したことを受け、外出禁止措置が取られているが、外出禁止措置を受けてオペラ歌手や市民がバルコニーで歌を歌う姿が話題になっていた。
その後、動画には、20人ほどの老若男女がベランダに出て、『さらば恋人よ』を歌っている姿が映っている。ピアノを伴奏する男性のほか、タンバリンを鳴らす女性の姿や、ギターを弾く女性もいる。紙に印刷された歌詞を見ながら歌っている子供の姿や、イタリア国旗をかざす子供の姿もある。動画は3月26日現在までに67万回以上再生されている。
この動画が世界に広がると、ネット上では「ドイツも大変なのに他の国のことを思いやれる心が素晴らしい」「私はドイツ人だけど、あなたたちはドイツ人の誇り」という声が挙がり、イタリアからは「ドイツの友人よ、ありがとう。私の目は涙でいっぱいです」「今は禁止されているけど、騒動が治まったらあなたたちを抱きしめたい。あなたたちも気をつけて」などの声が届いていた。
ドイツでも、新型コロナウイルスの感染拡大が進み、外出禁止措置が取られているが、SNS上では一部の人から、被害が最も大きい隣国のイタリアに対し、「ドイツに余力があれば助けてあげて欲しい」「マスクなど送れないものか」という声が挙がっている。また、実際にイタリアの重症患者を受け入れる準備も進んでいるようだ。
「地元紙の情報では、バイエルン州の病院がイタリア人の重症患者を受け入れたいと申し出ているそうです。地元紙は、受け入れについては閣議で決定されなければならないものの、重要な案件として取り扱われると報告しています」(ドイツ在住日本人)
外出禁止措置が取られてから、ドイツ人の多くが買い占めに走り、スーパーには生鮮食品を含めほとんどの物がなかったが、外出禁止措置から2週間ほど経った現在は少しずつ食料品が揃い始めている。外出禁止が続くことでストレスを抱える人も多いようだが、SNSを通じて知らない人同士が励まし合う光景も見られている。スーパー開店後の最初の1時間は、「お年寄りだけが入店できるようにすべき」といったような声も挙がり、お年寄りを思いやる余裕も出てきているようだ。
新型コロナウイルスの収束を願い、国境を超えて多くの人が手を取り合っているようだ。
記事内の引用について
「Germans sing ‘Bella ciao’ from rooftops in solidarity with Italians under coronavirus lockdown」(Classic FM)より
https://amp.classicfm.com/music-news/coronavirus/germans-sing-solidarity-italian-neighbours/