近隣国のイタリアで多くの感染者が確認されてから、ドイツの保健相が会見を開き、「流行の可能性がある」と発表。保健相が、会見を開いた日の午後には、スーパーから除菌ジェルや除菌石鹸が消え、ドイツ人の主食とも言えるジャガイモやパスタも品薄になっている。
「多くの人がすぐに買い占めに走ったようで、保健相が会見をした次の日には、小さな薬局を含めてどこのスーパーにも除菌ジェルはありませんでした。Twitterでは買いだめを表す『#Hamsterkäufe』がトレンド入り。これは直訳すると『ハムスター買い』という意味で、ハムスターがほほにエサを頬張るように買いだめをするということですが、まさにそんな状況です。ドイツでもネットで除菌ジェルや石鹸が高値で売られ始めていますよ」(ドイツ在住日本人)
しかし、政府の対応は早いと評価されているようだ。ドイツでは、新型コロナウイルスの感染が中国で確認され、騒動が大きくなってすぐの1月29日、まずは、ドイツ大手のルフトハンザ航空が中国本土発着の全便を運休すると発表。中国への渡航は禁止されていないものの、できるだけ見合わせるように外務省が警告し、ドイツ国内の主要空港には専門の医療スタッフが配置された。また、中国、日本、韓国、イタリア、イランからの入国にあたっては、健康に関する調査票の記入とドイツ国内での所在地を当局に報告することが義務付けられた。
さらに、保健相は、流行を受け、医師の判断で検査が無料でできるようにすることや、必要であれば法改正をすることを発表。また感染者が出た地域の学校や幼稚園をすぐに一時閉鎖するなどした。こういった対応には両国の対応を知る現地の日本人から称賛の声が挙がっている。
「日本では検査をせず、感染者の数をごまかそうとしているという報道もありましたが、ドイツでは保健相が『検査は少ないより多い方が当然いい』と発言していました。日本では微熱が続くことで病院に相談しても、なかなか検査が受けられないようですが、ドイツでは希望すれば、病院ですぐに検査が受けられるような体制が整いつつあります。また、各州では新型コロナウイルスの相談窓口を設けており、国民が指示を受けやすいようになっていると思います」(前出・同)
一方で、懸念されるアジア人への差別だが、サッカー観戦に訪れた日本人を、スタジアムの警備員が、「日本人なので新型コロナウイルスに感染している可能性がある」という理由でスタジアムから追い出す事件が起きた。警備員を雇ったチームは後日謝罪したが、アジア人に対する差別がないとは言い切れない。
「地域にもよりますが、電車に乗ると、隣に人が座らないなど、アジア人というだけで差別されているなと感じることもあります。普段、ドイツ人は差別を前面に出さない人が多いのですが、それだけ人々はピリピリしているのでしょう」(前出・同)
新型コロナウイルスの影響は、社会現象にもなりつつある。まずは一刻も早い収束を願うばかりだ。