パンデミックがもたらす不安感と気兼ねなく外出できないという2つのストレス源が人体に及ぼす影響は大きく、終息が長引くのに比例して蓄積していく可能性は高い。
高ストレス状態が続くと、身体症状やネガティブな心理状態として表れてくることがある。
例えば、「なぜか食欲がわかない」「食べ過ぎたわけでもないのに常に胃がもたれているような感覚がある」「ここのところ便通が悪い」など、食欲不振や消化機能の低下は、高ストレス状態における代表的な身体症状だ。
これらの症状は、外出の自粛によって生鮮食品の購入頻度が落ちて栄養が偏りがちになったり、慢性的な運動不足などによって特に表れやすくなるかもしれない。
また、「ベッドに入ってから何時間も眠りにつけない」「ぐっすり眠った感覚がない」「夜中に目が覚めて、そこから眠れなくなる」といった睡眠障害の症状が長く続く時は注意が必要である。
「睡眠不足は万病のもと」とも言われるように、長く続くと抵抗力が落ちやすくなる。そのため、感染症などにかかりやすくなったり、自律神経系に不調を来したり、うまく眠れないこと自体がさらなるストレッサーとして精神的疲労に輪をかけてしまう場合もある。
外出自粛による運動不足や日光浴不足で概日リズムが崩れやすくなると、睡眠不足を引き起こすリスクは高くなる恐れがある。
あるいは、アレルギー症状が悪化することもある。不安感や外出自粛のストレスによって、「目や鼻がかゆい」「鼻水が止まらない」といったアレルギー性鼻炎や花粉症、またはアトピー性皮膚炎などの持病のアレルギー症状が悪化しやすくなる場合がある。
高ストレス状態において引き起こしやすいネガティブな心理状態の代表的なものには、「やらなければいけないことがあるのにやる気が出ない」「ちょっとしたことでイライラしやすい」「人とのコミュニケーションがおっくうになる」などがある。
こうした、完全に解明されていない未知のウイルスによる不安感や外出の自粛がもたらす身体症状、またはネガティブな心理状態を重篤化させないために、以下のような対策も有効だろう。
まず、不安感が強い時には、不安を煽るような報道から一時的に目を離すといった方法も効果がある。
また、信頼できる人に自分の不安な気持ちを話すだけでも不安な気持ちが軽くなる場合がある。
同居する家族とのコミュニケーションや、会えない友人とのメールや電話、SNSなどでの交流にも不安によるストレスを緩和する効果が期待できる。
睡眠障害対策としては、日中は室内に日光を取り入れるようにしたり、なるべく昼夜が逆転しいように生活リズムを整えるような心がけが必要だ。
運動不足を解消するための方法としては、ダンスや筋トレ、踏み台昇降運動といった、室内でできる運動を取り入れるのがおすすめだが、ジムの閉鎖が続く中、自宅での実施が難しい場合は簡単なストレッチだけでも効果は期待できる。
ただし、どうしても眠れない時は、眠れないことにあまりこだわり過ぎない方が良い場合もある。
その他、DVD鑑賞や家族でできるゲーム、模様替えや整理整頓など、家の中でも楽しめることを見つけるようなポジティブな努力が、心理的に良い効果をもたらしてくれるだろう。
文:心理カウンセラー 吉田明日香