遺体が発見されたのは10月1日の未明午前1時。連絡がないまま帰宅が遅れているAさんを心配した母親と姉が勤務先周辺を捜索したところ、駐車場にAさんの車が停められているのを発見。車内にはAさんが助手席に座っていたが、眠るかのように仰向けで横たわっていたという。母親はAさんの肩を揺らしながら「こんなところで寝ていたら風邪を引くよ」と声を掛けたが反応はなかった。母親はルームライトをつけ、Aさんの顔を覗き込むようにして確認すると、Aさんの首に帯状の跡がついており、顔は青紫色にはれ上がっていることに気づく。驚いた母親と姉は、道路向かい側にあるビル1階のスナックに駆け込み、「娘が死んでいる」と叫んだそうだ。それを受けてスナックのママが110番通報し、すぐに警察が駆け付ける事態となった。
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司法解剖の結果、Aさんの死亡推定時刻は前日の9月30日午後8時前後。死因は紐で首を絞められたことによる窒息死と判明した。まぶたのうっ血具合から長時間にわたって絞められたものと見られている。Aさんの衣服や下着の女性器周辺が鋭利な刃物で切り裂かれており、上半身や乳房からは犯人のものと思われる唾液や毛糸が検出された。
遺体発見時、Aさんは片方の靴しか履いていなかったが、現場から約4キロ離れた県農業総合研究センターで残りの片方を発見。また、遺体に付着していた泥や木の葉から、Aさんは県農業総合研究センター付近で殺害されたと警察は特定した。Aさんの実家がある白山市矢頃島町の施設だ。
しかし、会社を退社後に自宅とは逆方向に車を走らせるAさんの姿を同僚が確認していたという。そして、午後8時50分頃には、普段駐車している会社のスペースにAさんの車が停められていたのも別の同僚に確認されている。事件が起こる数か月前から、会社で誰かに電話を掛けている様子を同僚に目撃されていたというAさん。警察は、Aさんと面識のある人物の犯行と見て捜査を進めたが、結局犯人は見つからず、2007年9月30日に公訴時効が成立した。
Aさんの遺体に付着していた毛糸は脱脂も着色もされていない特殊な製品で、富山県内の工場で製造された子供の髪飾りに使われているものと非常に酷似していたという。Aさんの下着や服を切り裂く際に使用された刃物だが、警察の捜査では、女性のムダ毛を剃るときに使うカミソリが使用された可能性が高いと推定された。当時、Aさんと親しくしていた異性は会社の同僚がいた程度だったといい、友達と遊ぶ際も金沢市内でショッピングやカラオケに行くぐらいだったそうだ。警察はAさんと面識のある人物による犯行と推定。残された毛糸、凶器に使用されたと思われるカミソリから、犯人は子持ちの主婦や妻子のある男性ではないかという声もネット上では見られた。
事件当時、他の都道府県ではすでにDNA型による個人識別を犯罪捜査に導入しているところもあったが、石川県はまだ導入していなかった。被害者に残された犯人のものと思われる唾液からDNA型を特定できなったことも、事件解決に至らなかった理由の一つかもしれない。実家付近で殺害しておきながら、わざわざ市街地にある勤務先まで移動した犯人の狙いは何だったのか。