Aさんの姿が最後に確認されたのは、同日午前11時30分頃。長女を学校まで送り届け、「家に帰って寝ている、終わったら電話して」と長女に言い残して帰宅した。これ以降、Aさんの足取りが掴めていない。午後3時頃、長女が帰宅した時には、Aさんの姿は見当たらなかったという。この時、玄関の鍵は開けられていた。
その後、長男や夫が帰宅する中、Aさんが自宅に戻ることは無かった。事件に巻き込まれたのではないかと心配したAさんの夫は、地元警察に捜索願を提出し、すぐに警察による捜索活動が開始された。
警察は周辺を捜索すると共に、Aさん宅の捜査にも取りかかったのだが、自宅から不可解なものが消えたことが判明する。部屋から持ち出すことは無かったというAさんの枕、長女のバスタオル、Aさんのビーチサンダルにバッグとポーチ、さらに車の鍵。何故か車は自宅に残されたままだった。また、Aさんの携帯電話も自宅に置いてあったという。無くなったバッグには、Aさんと子供らの健康保険証、クレジットカードなども入っていたが、失踪後に使われた形跡は見られなかったそうだ。
Aさんは事件に巻き込まれたのか、それとも自発的な家出だったのだろうか。家から消えたものは日用品ばかりだったことから、警察は家出の可能性も疑っていた。
人口2万8千人の小さな町で起きた突然の失踪事件に、地元住民の間には大きな動揺が広がったという。しかし、Aさんの失踪からわずか1日後、今度は同じ町内に住む2歳女児の行方が分からなくなる事件が発生した。3か月前には、同じ町内に住む高齢夫婦の刺殺体が発見される事件が発生したこともあり、地元住民の中には3つの事件の関連性を疑う声も上がったという。
結局、2歳女児行方不明事件は、後に母親が殺害遺棄した疑いで逮捕され、高齢夫婦の事件に関しては、無理心中と判断され解決したものの、Aさんについては未だ行方が掴めないままである。3つの事件は同じ町内で連続的に発生したという以外に繋がりはないことから、警察は関連性なしと判断したそうだ。
Aさんを知る人物は「子煩悩だったAさんが突然家出するとは考えられない、事件に巻き込まれた可能性が高い」と警察に話していたという。自宅から消えた長女のバスタオルとAさんの枕は一体、何を意味しているのだろうか。