ただ本人は、回復へ向けて「時間をかけてやっていく」と、落ち着きを見せている。その様子からは自身の立場や、選手としての自覚が十分に伝わってきており、ファンは安心感を抱くとともに、早くも新たなシーズン、そしてさまざまな「舞台」で投げる姿を思い描き、期待を膨らませている。
先発に定着した2016年から昨年まで、両リーグ通じて唯一となる4年連続二桁勝利を続けている。4年間、いずれも奪三振の数が投球回数を上回り、昨年は最多奪三振(227個)のタイトルも手にした。もはや名実ともに球界を代表する本格派投手であることは疑う余地もなく、今年も日本シリーズ4連覇を狙うチームの原動力となることはもちろん、最多勝タイトル獲得も目標の一つだ。
さらに今年は東京オリンピックへの出場も見込まれている。昨秋のプレミア12には不参加だったものの、五輪への出場は本人のみならず、稲葉篤紀監督他、ファンも含めて、大きな期待を寄せている。2017年のWBCでのパフォーマンスを振り返ってみても、千賀のストレート、そしてフォークは国際試合において無類の強さを見せつける。
また、抱き続けている、米大リーグ移籍への強い想いは現在も変わっていない。常に上を目指すことでプレーヤーとしての成長を遂げてきた千賀にとって、さらなるステージは必須だ。
数年にわたり要望しているメジャー挑戦も、絶対的エースであるがゆえ、ソフトバンク球団はポスティング移籍を容認しておらず、さらに、年棒も昨季より1億円以上も上乗せされていることにも、期待と信頼がはっきりと表れている。現段階において米球団への移籍を実現させるには 数年先のFA権取得まで待つ必要がある。
それでも、チーム、そして日本代表での活躍など、あらゆる面において投手としての実力をさらに大きなものとした先に、新しい道が開かれていくはずだ。育成出身選手としてさまざまなハードルを乗り越え、理想を現実のものとしてきた頼もしい右腕にはファンも大きな夢を重ねる。
2020年、また一つ、新たな扉を開く千賀滉大の姿を思い浮かべて、訪れるシーズン開幕を楽しみに待つ。(佐藤文孝)