「緩い変化球(=カーブ)を投げることで、ストレートを生かそうとしています。ストレートが効果的に使えるようになれば、スライダーなど、他の変化球も生きてくるというのが彼の持論です」(スポーツ紙記者)
斎藤はハッキリ言って、ストレートは速くない。カーブ再習得は、平たく言えば、その速くないストレートを“速く見せるため”に、球速の遅いボールを覚えようとしているのだ。
タイミングを外す、緩急のつく変化球と言えば、やはりカーブが有名だ。斎藤が「カーブ習得」という結論に至った理由を探ってみた。
「昨年12月、斎藤は都内ジムでの練習も公開しています。そのとき、大学一年生の頃の投球フォームを思い出し、それに近づけていると話していました」(前出・同)
プロの世界で過剰な注目を浴び、「自分」を見失ってしまったのだろうか。
19-20年オフにおいて、さらにこんな情報も聞かれた。
「12月に母校・早大のイベントがあり、そこで和田毅(38=ソフトバンク)と話をしています。和田の自主トレに斎藤が誘われ、カーブ再習得について斎藤は色々と質問したそうです」(球界関係者)
和田は緩急のピッチングに長けている。良き助言者を得たようだが、選手名鑑などで開示された「球種配分、空振り率等のデータ表」を見る限り、和田はほとんどカーブを投げていない。19年シーズンの全投球の2%以下となっていた。カーブは“得意ボール”ではないようだが…。
ソフトバンクホークスのOBがこう続ける。
「16年の春季キャンプだったと思うが、和田はチームメイトのバンデンハークにカーブを教わっていました。バンデンハークは普通のカーブとナックルカーブを投げ分けています。和田が教わっていたのはナックルカーブの方。最終的には、和田のナックルカーブは実戦に使えるレベルにはなりませんでしたが」
また、カーブを得意にしていた近年のピッチャーと言うと、元巨人・桑田真澄氏、ソフトバンクの工藤公康監督が思い出される。この2人に共通している点は、長く現役生活を続けられたこと。カーブで緩急を付けたピッチングができると、年齢とともに衰えたストレートでも十分に通用するのだろう。
斎藤がカーブに目を付けたのは正解と言えそうだ。カーブでも、ナックルカーブでも構わないから、実戦で使えるレベルまで高められれば、斎藤は本当に「一軍で使える」かもしれない。
高校一年生の時に投げていた変化球、大学初期の投球フォーム。「昔に戻す」ということなら、彼は誤った野球人生を歩んできたとも言えなくはない。周囲に良い助言者はいなかったのだろうか。もっと早く、先輩・和田と話をすれば良かったのに…。(スポーツライター・飯山満)