この1年間の話題の人物を素材にした「変わり羽子板」が先日、人形メーカーの「久月」(東京・台東区浅草橋)から発表された。
「今年の顔に誰を選ぶかは、社長を中心に社員で構成される選考委員会で毎年11月初旬に決定されます」(同社総務部・渡邉進さん)
選考基準のひとつは、創業170年余の歴史がある同社の社風に合った人物であること。「山本モナのラブホ羽子板に、朝青龍の八百長羽子板は?」と聞くと苦笑いされてしまった。スキャンダルや暗い話題の主は対象外なのだ。
サブプライム・ローンに端を発した世界同時株安やガソリン国会など、政界の変動に揺れた一年。日米の政界からは、麻生太郎首相とオバマ次期米大統領が羽子板として登場している。
麻生首相はすっかりネガティブなイメージが定着してしまったが、選考委員会では「今後の頑張りに期待して」選出した。話題の13人の中に加われて、首相も何とか面目を保てたか。
「変わり羽子板」は、すべて一品物の非売品。しかし過去にひとつだけ、元衆院議長の土井たか子さん(80)本人からの「どうしても」という要望で譲ったことがある。
スポーツ界では、巨人が13.5ゲーム差をひっくり返した大逆転劇がまだ記憶に新しい。久しく離れていた野球ファンを取り戻す、まさに球史に残るメーク・レジェンドだった。
また、オリンピックイヤーだった今年の夏は、テレビの前で日の丸選手の応援に夢中になった人も多いはず。女子ソフトボールの上野由岐子投手(26)と、競泳の北島康介選手(26)の金メダルコンビが羽子板になっている。
芸能界からは、視聴率30%突破目前のNHK大河ドラマ「篤姫」で主役を演じた宮崎あおい(23)が堂々の選出。大コケの連続だったNHK大河ドラマでは久々の大ヒット。史上最年少で大河ドラマの大役を見事に果たした。
お茶の間にクイズ番組で、珍回答を連発する「おバカブーム」が今年は吹き荒れた。おバカタレントを代表するのはやはりスザンヌ(22)。あでやかな着物姿での登場だ。
ラストは秋のうれしいニュース。日本人がノーベル賞を一挙に4人も受賞する快挙。学力低下が叫ばれるなか、日本人の底力を見せてくれた。ノーベル賞受賞者4人の顔が1枚に収まった“縁起物の極み”ともいえる羽子板は、見るだけで御利益タップリ?
これら8点は各地のデパートなどで巡回展示されている。17日までは千葉県千葉市の千葉そごう、20〜24日は福島県郡山市のうすい百貨店、27日〜1月4日は石川県金沢氏の香林坊大和の予定。
17日からは東京・浅草の浅草寺で師走の風物詩「羽子板市」が開催される。約50軒の出店が並び3日間で30万人の人出が予想される。売り子の口上を聞いて手締めで送り出してもらうのも、年の瀬の風情だ。
○23年前の第1作は清原和博
昭和61年(1987年)から毎年12月になると内外の政治、経済、スポーツ、芸能などの分野から、その年に明るい話題を提供した人物の「変わり羽子板」を発表してきた。これまでに作られた有名人の羽子板は199本。23年前の記念すべき第1作は誰だったのだろうか?
渡邉さんは倉庫に大切に保管されている1枚の羽子板を特別に持ってきてくれた。今や懐かしい西武時代のユニホーム。今季限りで引退した“番長”清原和博さん(41)だった。
当時はまだ、歌舞伎役者をかたどったものがベースで、千両役者に扮した清原さんの横顔がりりしいお宝級の1枚だ。(問い合わせ先・「久月」)