本作は実際の老人施設に従事する職員をはじめ入居者と家族からの取材をもとに脚本を作成。一般的には知られない、介護の美化された裏側に潜む、危険な業務内容や、複雑な人間模様が浮き彫りにされる。
アジャ・コングを主演に抜擢した理由について辻岡は「看護婦と格闘家は生死と肉体に隣接している意味で紙一重だと思うのです。そして、男勝りなイメージを持たれるアジャさんの誰も知らない『女性』としてのキュートな魅力を引っ張り出せるのは、僕しかいないと思った。」と答えた。
物語は特別養護老人ホームで働くアジャ・コング演じる看護婦が、入居者を暴行した介護職員の悪態を施設全体で隠蔽しようとする問題と真っ向から対立する。施設の評価を落としかねない反乱分子として邪険扱いされた看護婦は、仕組まれた誤薬によって、入居者を死亡させてしまうという事件へ発展。心身ともに衰弱した看護婦は、やがて新人介護士と激しい恋に落ちていく社会派ラブ・ストーリー。
アジャ・コング「元気ハツラツ、曲がった事は大嫌い、正義感の塊みたいなコですが、実は淋しがり屋で怖がりで誰かに守ってもらいたいのに、素直になれない強がりなコ。という、どちらかと言えば実際の自分とは正反対な役だったので、楽しかった。新たな発見をさせていただけるキッカケを作って下さった監督に心より感謝申し上げます」。
相手の介護士役にはモデルの藤岡秀樹を抜擢。さらに人気俳優の忍成修吾が言語障害を抱えた難役を熱演するなど新境地に挑戦する。その他「Dirty Heart」の横川康次、「ミスアリス」の栗生二稲、「男はつらいよ」シリーズでお馴染みの名優・佐藤蛾次郎など、見応えあるバラエティーに富んだ異色のキャストが集結。
原案は老人施設に看護師として従事していた水野聖子。老人施設の生活模様や、乱暴な介護の実態を投影し、アジャ・コングへ看護婦として実経験に基ずくリアルな在り方を指導するなど実在を基に構成されたエピソードも織り込まれている。
監督は30歳という若さで今作が劇場映画五作目となり、トロントリールハート国際映画祭で監督賞を受賞した奇才・辻岡正人。介護福祉士資格を持つ監督ならではの「実感」も多分に反映されている。
辻岡正人「これからの高齢化社会を支えていく若者に、現状のずさんな介護の在り方を知ってもらいたい。そして将来、自分の父母が、このような老人施設に入居するかもしれないという危機感覚を持ってもらいたい。それらを通してどのように自分たちが今後の福祉制度の見直しや、取り組みをしていかなければならないのか。考えられる一つのきっかけになればと思います。そのためにはまず、若者が介護の分野に興味と関心を持ってもらえるような描き方が大切です。全編パンキッシュなTSUJIOKAテイストで打ち放ちます」
2011年初頭に全国順次公開予定。
写真:前列左から、藤岡英樹、アジャ・コング、佐藤蛾次郎、水野聖子、辻岡正人。