桐蔭学園高は高校野球が盛んな激戦区神奈川県にあり、春夏合わせて12回の甲子園出場を誇る名門。ジャイアンツの元監督・高橋由伸氏、現役ではロッテの鈴木大地、楽天の茂木栄五郎など多くのプロ野球選手を輩出しているが、同校は学力も優秀なこともあり大学に進学するケースが多く、ダイレクトでプロ入りしたのは1977年、ヤクルトに2位で入団した渋井敬一氏以来42年ぶりとなった。
さらにベイスターズが高卒をドラフト1位で指名したのは、親会社がDeNAになる前の2011年、投手の北方悠誠を指名したのが最後。野手に限れば2009年の筒香嘉智までさかのぼる。
そして“6”に決定した背番号。1桁の背番号を高卒ルーキーが背負うのは、1999年ドラフト1位の田中一徳氏以来20年ぶりとなる。ベイスターズの背番号6と言えば、大洋時代には“とっつぁん”の愛称で親しまれた高木由一(嘉一)氏や、俊足のスイッチヒッター・高橋雅裕氏が、ベイスターズに変わってからは98年に日本一に輝いたシーズン、左ピッチャー相手にスタメン起用された中根仁氏らが背負って活躍した。
その後印象的だったのは、横浜高校出身のスラッガー・多村仁志氏だ。走攻守、強肩、パワーにファッションセンスもあり、背番号に絡めて“6ツールプレイヤー”と自らを評していた。森も神奈川の高校出身で、走攻守3拍子そろったプレイヤーである点も共通していることから、ファンの間では6番の後継者として最適だとの声も上がっている。
横浜市内のホテルで仮契約を結んだ際に、金額面でも背番号の面でも「期待されているなと思いました」と、率直な言葉を口にしていた森。「1年目から一軍で出してもらえるように頑張りたい」と高卒ながら即戦力になることを目標とし、同時に「10年、20年と結果を残し続けられる選手に」と長期プランも持っているとコメント。メジャー挑戦の筒香の穴も「何年後には越えられるように」と、大きな野心も秘める。久々の地元高校出身の若武者への注目度は、日に日に増すばかりだ。
取材・文・写真 / 萩原孝弘