その店は午前12時あたりを過ぎれば、まさに全席がホームレスの人たちだけで埋まるのだ。当然、寝に来ているわけだろうから、ごろんと寝転がっている人も多い。
そんな店内を、若い女の子を含めた従業員数人が、特に顔色を変えるでもなく、時にコーヒーを笑顔でそそぎに行ったり普通に接客、何事もないように営業しているように見えるのが常なる光景なのだが、異様と言うしかない。
最後の目撃が半年位は前の話だが、だいたいいつも、ホームレスのみで満杯状態だった。ほかの客は逃げてしまうのだろう。
同店は、某有名チェーンで、マンションの1Fを占めている。周囲はほかのマンションともども密集しており、店の外壁のうち2面のみが外からガラス窓越しに目視出来る造り。
2つの大きな窓越しに、店内をしっかり覗くまでもなく通りすがれば一瞬で異様な光景とわかる。あまり知られていない当たり前の都会の光景なのだろうか。
保健所によると、「臭いや食器などの衛生指導は立ち入りで出来ますが、ひとりひとりはお客さまなので、それ以上は…」ということだ。店にしても、対策がないのかもしれない。
この店舗の場所は、銀行街を少し路地に入った大きな公園の脇にあり繁華街の喧騒とはちょっと離れている。また、土地柄そんなエリアにもおしゃれな店などもそれなりにあるいっぽうで、古くからの小さなラブホテルが点在していて少しうらぶれている雰囲気に包まれている。そんないろいろな偶然の要素が絡み合ってこういったあまり見られないような都会の吹き溜まり的な景観を形づくってしまったとも思われる。
表現は悪いが、まさに珍百景そのものなのだ。
行政などは、手をこまねいているだけなのだろうか。おじさんたちの健康面のケアも含め、いろいろな意味でなんとかならないものか。