黒田は今季36歳を迎えるが、当人が望めば3年の複数年契約も可能だった。ドジャース側も「2年以上」を勧めたが、辞退した。再契約期間を「1年」に制限したのは、広島帰還が念頭にあったからか…。現時点では断定できないが、MLBは「日本人ナンバー1投手は黒田」と認識している。
黒田の3年間の通算勝利数は「28」。だが、MLBのゼネラルマネージャーは勝ち星よりも『クオリティースタートの回数』で先発投手を評価する。近年、その傾向はかなり強くなってきた。クオリティースタートとは、先発投手が6回を3点以内に抑えること。つまり、勝ち星はセットアッパーが付く場合もあるので、ゲーム主導権を握れるかどうかで、先発投手を評価しているのである。
メジャーが黒田を高く評価しているデータがいくつかある。昨年オフ、『今オフのFA選手ランキング』なるものがアメリカ各メディアで報じられた。各大手メディアが毎年行う恒例企画ではあるが、スポーツ専門TV局『ESPN』のランキングでは、黒田は11位。この順位はヤンキースのスーパースター、デレク・ジータよりも「上」だ。また、「勝ち運はないものの、3年間の防御率はメジャー全体の30傑に入っている」とし、黒田の去就がドジャースのドン・マッティングリー新任監督の命運を左右するとも称されていた。
黒田がドジャースのエースに上り詰めた理由はいくつかあるが、「ストレートが速く、球種が豊富なうえにその1つ1つの精度も高い」ことだろう。「外角に広い」とされるメジャーのストライクゾーンに適応できるスライダー、打ち損じを誘うフォーシーム、ゴロアウトを量産させるツーシーム、カットボール。空振りを取りたいときはフォークボールを…。おまけにコントロールも良いのだから、本当に黒田は凄い。
今季、飛躍が期待できる要素もさらに加わった。昨季途中からやってきたベテラン捕手のロッド・バラーハス(35)と意気投合していること。バラーハスはリードを買われてトレード獲得した。年齢的なものもあって盗塁阻止率は低いが、ホームベース上での接触プレーでも好ブロックを見せてきた。20代はダイヤモンドバックスにいたが、監督、コーチの話を書きとめ、対戦打者のクセなども暗記してきたという。まさに日本人投手が好みそうな知性派捕手である。黒田はこのバラーハスと組んで以来、投球テンポがさらに良くなった。バラーハスも精密なコントロールを誇る黒田とのバッテリーにやり甲斐を感じているという。
古巣広島は若い正捕手候補が育っていない。帰還説が本当なら、このバラーハスも連れて行けばいいのに…。今季、黒田は投手タイトルを狙えるかもしれない。(スポーツライター・飯山満)
外国人選手名の方仮名表記はベースボール・マガジン社刊『月刊メジャー・リーグ』を参考にいたしました。