一方の軽乗用車を運転していた下山真子さん(62)については同法違反容疑で逮捕後、釈放して任意で取り調べをしており、今後、書類送検する方針だという。
この事故ですぐに思い出すのは、去る4月19日に東京・池袋で暴走した乗用車に母子がはねられて死亡した事故だ。
この事故は87歳の男性が運転する乗用車が暴走し、母子の他に10人を負傷させる大事故だった。大津の事故は2台の車の運転手は即現行犯逮捕され名まで公表されたが、池袋の事故については、現行犯逮捕もされておらず、事故直後は男性の名も公表されなかった。
実はこの男性は、旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長という「元通産省キャリア官僚」であり「瑞宝重光章受章者」という“上級国民”であるため現行犯逮捕されないのだという説がネットで拡散された。上級国民とは、20年東京五輪大会エンブレムの著作権侵害疑惑問題に端を発する一般の人の理解を超えた言動を行う政治家や専門家、官僚などをヤユした表現だ。
とはいえ、事故現場に駆け付けた交通警察が、事故処理の混乱の中で、とっさにこの男性が元キャリア官僚で受勲者である“上級国民”であるから逮捕しない、できないという判別ができるはずがない。なのになぜこのようなウワサが立ったのだろうか。
「警察の調書の様式には『受勲』の有無を確認する欄があるからでしょう。それを知っている人が拡散させたのでしょうね。しかし、この記載は“上級国民”を優遇するためのものではありません。将来的に有罪が確定したとき、勲章等を剥奪するかどうかを判断するためのものです。またマスコミが『上級国民』に忖度し、『さん』付けで呼んだというのも、被疑者が事故の衝撃で胸部を強く打ち骨折、救急搬送され、そのまま入院し、現場にはおらず、物理的に逮捕できなかったからです。逮捕されていないわけですから各報道機関が独自に判断し、『さん』付けで事故を報道したのであり、警察判断とは関係がありません」(元警察関係者)
日ごろ庶民は“上級国民”とおぼしき連中に鬱憤がたまっている。池袋の事故男性はとんだ標的にされてしまったようだが、2人のかけがえのない命を奪った罪が軽くなるわけではない。