3月16日、韓国のニュースサイト「MBCニュース」は、2018年11月27日に韓国北部を流れる河川・漢江に飛び込み、自殺を図った20代女性の死因が溺死ではなく、スクリューに巻き込まれた際にできた傷が致命傷になった可能性があると報じた。女性は漢江に飛び込んだ後に、電話で救急に助けを求めており、レスキュー船が駆けつけたという。
同記事によると、遺体の解剖を担当した、犯罪捜査の鑑定をする研究機関・国立科学捜査院は、遺体に残った大きな切り傷について「船舶のスクリューによって発生した傷」と発表。通常、生きている状態でしか出血は起こらない。女性の死因が溺死ではなく、レスキュー船のスクリューに巻き込まれて傷を負い、失血死した可能性が出てきたというのだ。
調査結果を受け、警察が事件当時に現場付近を通った全ての船を調べたところ、救助に向かったレスキュー船以外は通行していなかったことが判明。3月19日現在、レスキュー船や目撃者に聞き込みを行うなど、警察の捜査は続けられているようだ。
一連の報道に対し、レスキュー船側は「何かにぶつかった衝撃は全く感じられなかった」「懸命に捜索したが、女性を見つけることはできなかった」と話しているという。
韓国のネット上では「レスキュー船のせいになるのか?飛び込んだ奴が悪いのに」「自ら死のうとした人間が生きている人に迷惑をかけるのか」「そもそも自殺をしようと飛び込んでおいて助けを求めるとはおかしな話だ」などとレスキュー船を擁護する声が多くみられた。
一方で「事故から時間が経ちすぎている。明らかに自殺では発生しない傷があるのに未だに調査中とはどうなっているのか」「救助隊のミスなら正当な罰を与えるべき」などと、警察の調査の遅れに対する怒りの声や調査隊に責任を求める声も上がった。
救助が失敗に終わり、結果的に人が亡くなった例は他にもある。
2017年12月には、ペルーの首都リマで自殺志願者の救助に失敗するという不幸な事故が起きた。高層ビルから飛び降りようと身を乗り出していた男性を近隣住民が発見。警察に通報し、即座に救助隊が駆けつけた。救助隊は屋上からロープを使い、最上階近くの部屋の手すりにいた男性の場所までたどり着き、彼を抱えて屋上に戻ろうとしたが、誤って男性が滑り落ちてしまったという。
また、2017年12月には、中国の陝西省西安市で、女性がビルの11階から飛び降りる事件が発生。下から見上げた警備員は、女性を受け止めようと身構えたが、落下してきた彼女の体が警備員の頭部に激突。不幸なことに2人とも即死してしまったという。
さらに、2017年10月、インドのガンジス川で男性が溺れる事件があった。男性のもとにボートが漕ぎつけたが、救助は失敗。もう一艇のボートが出動したが間に合わず、男性は溺死したという。溺れている男性のそばに50人以上の人々がいたにもかかわらず、誰も男性を救えなかったとされている。
今回、韓国で起きた事故では、川に飛び降りた後に助けを求める電話をかけており、2017年のペルー・リマの事故でも被害者は最後、救助隊にしがみついて助けを求めていた。救助の段階で彼らは「自殺志願者」ではなかったのである。自殺志願者に限らず、あらゆる被害者の救助方法を見直す必要があるのではないだろうか。