元ユニクロの従業員だったオーストラリア・メルボルンの女性が、日本のファストファッション大手であるユニクロから受けた差別やいじめ、長時間労働などの「虐待的な文化」を告発。約100万ドル(約1億円)の損害賠償を求める訴訟を起こしたという。3月3日、オーストラリアのニュースサイト「ニュースコムエーユー」が報じた。
同記事によると、訴えを起こした女性の「虐待的」な仕事は、彼女に限ったことではないと、他のユニクロ元従業員が証言しているという。取材に対し、元従業員の女性は、ユニクロでの長時間労働によりPTSDを発症したと述べた。
厚労省によるとPTSDとは、怖い思いをした記憶が心の傷となり、 そのことが何度も思い出されて恐怖を感じ続ける病気、とある。彼女はシドニーのユニクロに勤務していたが、日本独特の職場文化を感じていたという。これが今回の訴訟を起こした女性が言う「虐待的な文化」ということだと思われる。
先述の従業員は続けて、定刻通りに帰宅すると何か悪いことをしているのではないかと感じさせる雰囲気があり、週60〜80時間ほどの長時間勤務をせざるを得なかったと述べている。また、ある日は翌日午前1時まで働くことになったが、結局、泊まりこみで翌日の仕事に備えなければいけなくなり、父が心配して店に訪れたこともあった、と同記事内で語っている。
この記事を受け、オーストラリア在住の日本人ネットユーザーからは「『ウェルカムユニクロ』って叫ばれてギョッとしたことがある」「日本では普通の仕事のやり方を豪州でやると、従業員がみんなPTSDになっちゃうってすごいよね」「日本企業のやり方をそのまま持ってくると、オーストラリアでは違法になることもあるはず」など、ユニクロをはじめとした日本企業の問題点を指摘する声が上がった。
また、日本のネットユーザーは「ユニクロに限らず、日本の会社は従業員を大切にしないことが多い」「日本は社畜社会だから」「これって日本の働き方そのものが海外基準で見たら虐待的ってことだよな」「日本の常識は世界の非常識」「日本でもちゃんと調べればPTSD山ほどいるよね?仕事でメンタルを病んでPTSDすごく多いと思う」などと、日本企業の労働環境に憤る声が噴出した。
しかし、一部では「そんなユニクロ、経験したことないんだけど、なんか変な方向で伝わってるんじゃないのか」と記事の信憑性に疑問を呈する声も散見された。
オーストラリアでは、基本的に残業をゼロにする労働方針がとられており、残業が必要になった場合でも「午後8時」を過ぎると違法とされるケースもあるようだ。従業員を過酷な労働から守るための労働法で、1日10時間以上の労働は禁止されているという。
日本でも、1日の労働時間が8時間、週に40時間以上の労働は労働基準法で原則禁止されている。昨年、働き方改革関連法が成立し、残業時間の上限が初めて法律で規定された。一方、同じ働き方改革関連法に盛り込まれた「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」は、「定額働かせ放題」を実現させる制度とも言われ、長時間労働の是正と逆行する。これは、労働時間の規制が厳しくなる状況を見て「なんとか抜け道を作りたい」と考える経済界の意向を強く反映したものだと言われている。実際、残業を強いる企業が多数存在し、社会問題になっているのが現状だ。
「虐待的」とまで報道され、日本企業が海外進出する際に「郷に入っては郷に従え」という鉄則をあぶり出しただけでなく、平成の次の時代に向けて日本の労働時間に対する意識を変える契機となるかもしれない。