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神保町女子化、菊池亜希子さんを探せ

 今年話題となった出来事を振り返ると「女子」というキーワードが浮かぶ。強く生きる女性の姿が人々を励ます。

 出版界も「女子」に注目した。「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海著)、「高円寺・東京新女子街」(三浦展・SML著)、「東京女子会ガイド」(ムック)などが平積みされている。
 そして現在、古書店の街として知られる神保町(東京都千代田区)で、「女子化」が進んでいるという。

 神保町女子化の背景には、菊池亜希子さん主演映画「森崎書店の日々」の存在が指摘されている。
 映画「森崎書店の日々」は、失恋で傷ついた女性が神保町にやってくる物語だ。神保町シアターをはじめとし全国で上映され話題となっている。神保町シアターでの「森崎書店の日々」初日舞台あいさつの時、菊池亜希子さんは、東京メトロ神保町駅A7番出口から降り立ち、神保町シアターまで歩いてやってきたという。
 神保町女子化の実態を探るべく、東京メトロ神保町駅A7番出口へ向かった。
 A7番出口は、神保町交差点の一画にあった。離れた場所から観察すると、利用者の約半数が女性であった。この中に、神保町女子がいる。取材を試みた。何人か立ち止まってくれたが、「失恋中ですか」との質問を投げると、それ以上の調査は困難となった。

 ここで行き詰まるわけにはいかない。プランBとして、事前に「おさんぽ神保町」というフリーペーパーを入手していた。神保町の話題が満載された無料情報誌だ。開けてみると、「神保町女子コース」が掲載されていた。キャッチフレーズは、「誰がつけたか神保町女子コース」。
 「神保町女子コース」の地図に掲載されていたのは、和造りのおしゃれな喫茶店、和紙や便せんを取り扱う店舗ら、創業昭和24年の老舗(しにせ)和菓子店など。「女子的ポイント」が上がるという各店舗は、明るい外観だった。なかには、一人でお茶を楽しむ女性もおり、話しかけると上品に受け答えをしてくれた。「失恋中ですか」と聞くことは控えた。

 「神保町女子コース」を回ったのちも、神保町を散策した。夏目漱石が学んだという碑の辺りや、「周恩来ここに学ぶ」の碑がある公園や、記念碑「日本野球発祥の地」の周辺などを調べた。しかし、菊池亜希子さんはどこにもいなかった。
 夕刻が迫っていた。神保町交差点に戻った。白山通りを皇居方面へ向かった。一ツ橋を渡り、平川門にたどり着くと、お濠がたそがれていた。

 一日取材をしたが成果は得られなかった。ベンチに腰掛け、うつむいた。「具合が悪いのですか」と声を掛けられた。清潔な身なりをした女性が立っていた。付近にあるという、お嬢様学校として有名な女子大に通う学生さんか。問題のないことを告げると、微笑んで、夕日の中に消えていった。

 神保町女子は、やさしかった。(竹内みちまろ)

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