球場に“番長キヨハラ”が帰ってくるのは本当か。
「発起人というか、立案者は起業家です。東京六大学でのプレー経験者なので、米球界に挑戦したいとする夢を持つ学生選手、アマチュア選手が多いことを知っているのでしょう」(スポーツ紙記者)
似たような動きは過去にもあった。だが今回は、それらとは違う。「監督・清原」の名前によって、NPBを始めとする既存の野球組織やその関係者が色めき立っているのである。
「今も清原氏の周りには、たくさんの支援者がいます。社会復帰のサポートをする人や、再びユニホームを着られるように尽力している人たちです」(ベテラン記者)
清原氏が覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されたのは2016年2月。同年5月に懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決を受け、その後のメディア出演はゼロではないが、「どのようなリハビリ生活を送っているのか」は、ごく限られた人間にしか伝えられなかった。
「清原氏の話題になると、意図的に避けるプロ野球解説者やOBは、今も少なくありません」(同)
氏の猛省と社会復帰のための努力について、悪く言う人は1人もいない。ただ、当時のインパクトが大きかっただけに関係者がどよめくのも無理もない。当然、「監督・清原」は大きな話題性を呼ぶだろう。
しかし、話題性が大きければ大きいほど、既存団体は無視できなくなる。夏の甲子園大会後のU−18大会が定着する前、こんな衝突劇があった。
「中学生以下の硬式野球クラブの一つであるポニーリーグが16歳から18歳までの国際大会に参加したいとし、日本高等学校野球連盟(以下=高野連)に相談しました。回答は『絶対ダメ』とのことでした」(アマチュア野球関係者)
「16歳から18歳まで」といえば、高校野球の年齢だ。センバツ、夏の甲子園大会の裏で、「高校生の国際大会をやられたら、たまらない」と思ったのだろう。クラブ側は「進学した高校に野球部がなかった」、「事情があって高校野球を続けられなかった者に限定する」などの再提案もされたが、その結果は、今日の状況を見ればお分かりいただけるだろう。
清原氏の新野球団体が「米球界挑戦」を目指すアマチュア選手を集めるとなれば、プロ野球を経由せずに海外プロ組織と契約した選手には「帰国後のペナルティーを」と決めたNPB、それに異を唱えていない高野連、大学連盟、社会人野球界との“衝突”は必至だ。
「国内独立リーグと契約する外国人選手も増えており、独立リーグからNPB入りした外国人選手も過去にはいました。彼らは独立リーグで日本の習慣や練習方法を学んでいるので、NPBに溶け込むのも早いのです。わざわざ海外に行かなくても外国人選手を調査できると、独立リーグの外国人選手受け入れを歓迎する向きもNPBにはあるほどです」(同)
それだけではない。国内独立リーグもビックリだが、目下、海外エージェントは「日本経由のメジャーリーガー」という新ルートを確立させるため、水面下で奔走しているという。
「日本のプロ野球選手の実力は、メジャーリーグも認めています。新しいメジャーリーガー誕生のルートとして『日本の独立リーグからNPBを経由してメジャーへ』という過程を確立させたいとするエージェントも多いんです。なぜなら、アメリカのマイナーよりも、日本の独立リーグ、NPBの育成組織の方が、治安、環境が優れており、育成も上手ですからね」(同)
こうした情報を聞かされると、清原監督の新団体は、既存組織に歓迎されそうにない。一方で、「新しい団体ができれば球児の夢は広がります」と、前向きに捉えるアマチュア指導者もいた。
11月30日に行われるトライアウトには、すでにエントリーしている元プロ野球選手がいた。女子高生との不適切な関係が原因で、DeNAを解雇された元投手の綾部翔だ。
再出発のチャンスは誰にでもある。しかし、新団体のスタートは、色眼鏡で見られる可能性もありそうだ。
「高野連とNPBは友好的な関係を築きつつあり、指導者復帰にしても、これまでは2年間の教員実績が必須条件でしたが、今は2日程度の講座を受講するのみでOKになりました。NPBの『いきなりメジャー挑戦はNG』とする方針に反対していない高野連が、アマチュア選手の米球界挑戦をサポートする組織を好意的に見るとは思えません。高校野球に進まずに、そうした海外志向の組織入りを目指す高校生が出る可能性があったら『待った』を掛けるでしょうね」(前出・スポーツ紙記者)
そういえば、エンゼルスの大谷翔平も「いきなりメジャー挑戦」を明言し、ドラフトで強行指名した日本ハムが引き止め、現在に至っている。大谷と同じ夢を持つ球児に対し、「待った」を掛ける既存組織と、それを応援する新団体。清原氏の再スタートは応援されるべきだが、衝突は避けられそうにない。