社会
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社会 2017年07月28日 14時00分
世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第231回 科学技術小国化
1990年代半ばの時点で、日本が高齢化し、社会保障支出が増えていくことは誰の目にも明らかであった。とはいえ、当時の日本はバブル崩壊を受け、総需要がすでに不足気味の状況だったのだ。国民が消費や投資という「需要」を抑制する中、高齢化により社会保障支出が増えていくというのは、むしろ僥倖(偶然に得る幸せ)だったのである。 ところが、財務省(当時は大蔵省)はそうは考えなかった。 「社会保障支出は、いや応なしに増えていく。それならば他の支出を削り、増税をしなければならない」 という方針に基づき、公共投資、防衛費、科学技術研究費、教育費など、日本国の繁栄に必須の支出の削減、抑制が始まった。 困ったことに日本において緊縮財政を推進したのは、財務省という官僚組織のみではない。わが国では経済学的な財政責任原則と、「コンクリートから人へ」に代表される左翼的公共事業否定論、あるいは「国家否定論」が結び付き、猛烈な勢いで緊縮財政が推進されることになった。財務省と「コンクリートから人へ」派の利害が、こと緊縮財政においては完全に一致したのだ。 例えば1995年の11月国会において、大蔵大臣として「財政危機」を宣言した典型的な「コンクリートから人へ」派の武村正義は、'96年に中央公論に『このままでは国が滅ぶ-私の財政再建論-』なる刺激的なタイトルの寄稿をした。 何しろ、国会で大蔵大臣の立場にある人物が「財政危機宣言」「このままでは国が滅ぶ」と表明したわけだ。わが国で「財政破綻論」が急速に広まっていったのは、無理もない話である。 武村や大蔵省(当時)が主導した財政破綻論の影響で、'97年に消費税が増税され、公共投資も大幅に削減された。バブル崩壊後に増税、公共投資削減という「デフレ化政策」を実施したわけだから、わが国は真っ逆さまにデフレ経済へと突入。国民がひたすら貧しくなっていく「失われた20年」が始まった。 今年6月2日に閣議決定された『平成29年版 科学技術白書』では、研究価値が高いことを意味する「被引用論文件数」の国別順位について、日本が10位にまで後退したことが指摘された。'12〜'14年の平均で見ると、日本の被引用論文件数のシェアは、わずかに5%にすぎない。トップはアメリカで、2位が中国、以下イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、オーストラリア、スペインと続き、ようやく日本である。 '02年から'04年の日本の被引用論文件数のシェアは7.2%で、アメリカ、イギリス、ドイツに次ぐ4位であった。凋落著しいとしか表現のしようがない。 科学技術白書では、研究力が低下した原因として、 「雇用が不安定な若手研究者の増加」 「海外の研究者との連携が少ない」 ことを挙げ、企業など外部の経営資源を活用し成果を生む「オープンイノベーション」を、大学や公的研究機関が推進する必要があると強調した。 とはいえ、日本の研究力が低下した最大の理由は、間違いなく政府の科学技術予算の抑制である。 2000年度を100とし、各国の2015年度の科学技術予算を見ると、中国が1121(!)、韓国が474、アメリカが163、ドイツ159、イギリス152となっている。それに対し、日本はわずか106である(本誌左図参照)。中国が11倍以上に科学技術予算を拡大したのに対し、わが国はわずか1.06倍なのだ。 研究費の政府負担割合は、日本は18.4%にすぎず、主要国最低である。世界の主要国の中で、日本政府が最も「政府として」科学技術研究に予算を投じていない。これが真実である。 なぜ、このような事態になるのか。もちろん、プライマリーバランス(PB)黒字化目標が原因である。 PB黒字化目標が維持される限り、政府が何らかの予算を増やそうとしたとき、 「他の予算を削るか、もしくは増税する」 という話にならざるを得ない。 日本は高齢化で社会保障支出が持続的に増えていく。というわけで、社会保障支出の増大を「抑制」すると同時に、他の予算については「必ず前年比を下回ること」という、マイナス・シーリングがかけられてきた。 PB黒字化目標はデフレを継続させ、国民を貧困化させると同時に日本の科学技術予算の拡大を阻み、技術小国化へと向かわせる。 あまりに悲惨な科学技術の状況を受け、安倍政権は'17年4月20日、2020年までに科学技術分野への投資額について官民合わせて24兆円に増やすことを目標とする方針を固めたと報じられた。政府と地方自治体で計6兆円とし、民間企業には18兆円の投資を求めるとのことである。 日本の科学技術予算は海外に比べると極端に低く、米国の4分の1以下の水準である。というわけで、日本政府は科学技術を増やそうとしているわけだが、PB黒字化目標が維持されている以上、例によって、 「その分、他の支出を削るか、増税する」 とならざるを得ない。科学技術予算が増えた分、減らされるのは公共投資か。医療・介護サービスか。あるいは、双方か。 防衛費も同じだ。北朝鮮のミサイル危機が深刻化し、わが国が敵基地反撃能力を持とうとしたとする。敵基地反撃のための装備を整えるためには、もちろん予算と時間が必要になる。というわけで、敵基地反撃能力を自衛隊が保有しようとしたとして、 「それでは、防衛予算を積み増すために、他の予算を削るか、増税を」 と、なってしまうのがPB黒字化目標なのだ。 しかも、最悪なのは、デフレ期のPB黒字化追求は、政府に緊縮財政を強要し、名目GDPの成長率を抑制することで、税収まで減らしてしまうという点だ。実際、'16年度の租税収入は対前年比で約8000億円も減ってしまった。税収が減れば、PBは悪化する。ならば「PB黒字化の早期達成を!」と、悪循環を繰り返す羽目になる。 PB黒字化目標が残る限り、わが国が技術大国の座を取り戻すことはない。みつはし たかあき(経済評論家・作家)1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。
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社会 2017年07月28日 10時00分
南極からの巨大氷山分離が招く海面上昇の可能性
異常気象を異常とも思わなくなったほど、昨今の気候変動は激しい。そんな折、南極半島東岸に存在するラーセンC棚氷の先端にある氷山が分離したという。 この巨大氷山の広さは6000平方キロメートルで茨城県の面積相当もあり、これまで記録された中でもトップ10に入る。 「ラーセンC棚氷は南極大陸で4番目に大きな棚氷。2014年にヒビが確認されたため分離の兆候ありとして観察が行われていました。昨年からヒビが急速に拡大していることを確認、今年1月には、数カ月内に分離が起こる可能性ありと発表していました。今後、研究者らは、船舶との衝突などが起きないように追尾していくことになります」(気象ジャーナリスト) 広さに関しては、この氷山より上がある。 「衛星時代に入って観測された過去最大の氷山は面積約1万1000平方キロメートルのもので、都道府県面積6位の秋田県並みでした。この巨大氷山の欠片は6年経ってもニュージーランド付近をウロウロしていました。また1956年には、米海軍の砕氷艦が約3万2000平方キロメートル級の氷山(岩手県二つ分)に遭遇したという報告もありますが、衛星のなかった時代ですから追跡調査が行えませんでした」(サイエンスライター) 心配なのは海面上昇だ。 「グラスの中に水と氷とを入れた場合、氷が溶けてもグラスの水面は上昇しません。これと同じ理由で、溶けたからといって海面が上昇するわけではありません。しかし、原因が何であれラーセンC棚氷は分離前よりも12%も小さくなっており、今回に続いて棚氷が崩壊すれば、背後にある氷河が海へと流れ込む速度が増し、将来的に海面が上昇する可能性もゼロではないという指摘もあります」(同) ほとんどの研究者は今回の巨大氷山について、直ちに危険と認識する必要はないと言う。しかし、これこそ“氷山の一角”ではないことを祈りたいものだ。
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社会 2017年07月27日 14時00分
ホテルもセットで開業をぶち上げた「無印良品」現在進出計画の思惑
シンプルかつ機能的なデザインで、衣料から日用雑貨、家具や食料品、昨今では住宅建設まで取り扱う『無印良品』を運営する良品計画の業績が絶好調だ。その勢いを買い、今度は日本最大の商業地、東京・銀座で今度は「無印ホテル」を展開するという。勝算はあるのか。 経営コンサルタントは、こう分析する。 「無印は強い。2017年2月期第3四半期決算では、純利益が前年同期比16.7%増の199億9600万円。第3四半期決算として4期連続の最高益更新となっています。それはアパレル業界を見れば顕著で、'17年2月期第3四半期決算では婦人ウエアが前期比で3.5%増。紳士ウエアも6.8%増と、苦しむ百貨店とは対照的。その業績の勢いで、今度はホテルですからね」 良品計画が7月5日にリリースしたホテル概要によれば、新ホテルの場所は銀座3丁目の読売新聞東京本社と三井不動産が展開、建設する、10階建て新ビルだ。6階までは『無印良品』の店舗となり、売り場面積は約3300平方メートル以上の旗艦店。'19年春の開業を目指すという。 「さらに6階の一部から10階までをホテル(仮称『MUJI ホテル』)として稼働させる。設計運営はホテル建築運営に実績のある小田急電鉄グループのUDS。コンセプトはアンチゴージャス、アンチチープで、部屋の中はテーブルからベッドカバーまで無印商品で統一されるといいます」(同) 無印では近々、奈良市の刑務所跡再開発地、さらに無印信奉者の多いとされる中国の北京と深センでもホテル建設計画を進めている。 「無印は現在、世界27カ国で約800店舗超を展開しており、海外の売り上げが全体の3割を占めています。中でも中国、韓国、マレーシア中心に無印商品は大人気。その熱烈な愛好家たちの間で旧都庁跡地にある有楽町店は“聖地”とも呼ばれ、多くの外国人観光客が立ち寄っています」(百貨店関係者) ところが、その有楽町店が契約の関係上、今後、残存できるかどうか微妙となった。ならば、外国人観光客をキープするためにも近場のホテルと旗艦店をセットにして売り出そうというわけだ。 それにしても、この東アジアを中心にした熱狂的な無印愛好家はどうして生まれたのか。アパレル業界関係者はこう言う。 「無印良品の原点は“ノーブランド”。衣料品なら着心地、生活雑貨なら使い勝手、食品なら健康によいものにこだわっている。例えば、パジャマなら脇の縫い目のないものでヒットした。婦人ウエアは、オーガニックコットンフランネル素材のニットやシャツが好評。シンプルなデザインで、機能的かつリーズナブルな価格帯の衣料品は、節約マインドを緩める。無理のない価格でお洒落を楽しむことができる、時代にマッチした戦略で、そのコンセプトは他の商品や建造物でも生きる。安いながらも日本らしい質のよさが、海外の人たちに受け入れられているのではないか」 しかし、『無印良品』が最初から国内外の人たちに爆発的に受け入れられたわけではない。 「良品計画は1980年、西友のPB商品部門として出発し、やがて独立。当初は順調だったが、2001年に赤字に転落した。原因は急成長による慢心、経営の硬直化などが言われましたが、人事の見直しからすべての面で再点検を行った。中でも、とりわけ究極の対策とされたのが、消費者参加型の商品開発に転じたこと。これが功を奏して大躍進が始まり、“ムジラー”とまで呼ばれる愛好家が増えたのです」(前出・経営コンサルタント) 今年5月末時点で、海外の『無印良品』は中国を中心に408店を展開し、2018年2月期末には、日本より海外の店舗数が多くなる見通しだ。 海外進出に伴い、知名度も急上昇している。世界最大手のブランディング会社・インターブランド社日本法人調査によれば、『無印良品』の“ブランド価値”は5年連続で25%超増加。「日本のグローバルブランド 2017」でも初めてランクインして19位に食い込み、“世界の無印”になりつつある。 「ホテル展開においては、高級宝飾品ブランドの『ブルガリ』や『アルマーニ』、『ベルサーチ』ほか、アパレルやライフスタイルブランドの運営例もあるため、手法次第では成功の道が開ける可能性はある。しかし一方で、アパレルや日常品の商品開発とホテル経営は似て非なるもの。無印の商品が世界的に成功してきたのと同じように、必ずしもうまくいくという保証はない。ひとまず'20年の東京五輪までは知名度と話題性でいけるでしょうが、問題はその後でしょう」(ホテル業界関係者) 無印の新たな挑戦は、どこまで通用するのか。
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社会 2017年07月27日 10時00分
TDR × USJ 夏休み集客を狙う新アトラクション対決の行方
夏休みの人気スポットといえばテーマパーク。東西の雄、東京ディズニーリゾート(TDR)とユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は今年、ともに新しいアトラクションを誕生させ集客を見込んでいる。 「USJは100億円を投じた『ミニオン・パーク』がオープン。対するTDRは東京ディズニーシーに『ニモ&フレンズ・シーライダー』を導入。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』がテーマの新たなイベントも始まりました」(旅行雑誌編集者) 何かと比較されるTDRとUSJだが、ここ最近はUSJが圧倒している印象だ。実際、ランドとシーを合算したTDRの昨年度の入園者数は、前年度比0.6%減の約3000万人。2014年度の3137万人をピークに減少の一途をたどっている。一方、USJは訪日外国人客がけん引し、昨年度の入場者数は前年度比5%増の約1460万人。TDRの約半数ではあるものの、3年連続で過去最高を更新している。 「TDRは混雑対策が遅れ、リピーターの足が遠のいています」(同) 人手不足も深刻で、昔に比べてキャストの採用に苦戦しているとの話もある。 「キャストになるのは狭き門ですが、労働環境はかなりブラック。想像以上の辛さに夢破れて退職するキャストも多い。入れ替わりの多いキャストはアルバイトを動員して賄っていますが、時給は1000円がベース。その割に求められるレベルが高すぎて、ヤル気がないキャストが増えています」(TDR元社員) こんな状況では、ますますUSJに人が流れていきそうだが…。 「主にアトラクションを楽しむという点では同じですが、TDRはどこまで行っても“ディズニーがテーマのパーク”であり、片やUSJはハリウッド映画、日本のアニメ、ゲームと“何でもありの娯楽施設”。TDRは『楽しい!』という感覚、USJは『楽しむぞ!』という感覚なので、比較に意味はないのかもしれません」(前出・編集者) やはり、誰と一緒に行くのかが重要のようだ。
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社会 2017年07月26日 14時00分
「母は殺したくない」祖父母を刺殺した26歳・孫の“狂気の中の真(まこと)”
血のついた包丁と金属バットを両手に持った男の顔は青白く、表情が全くなかった。兵庫・有馬温泉近くの山あいの集落で凄惨な5人殺傷事件が発生したのは、3連休最中の7月16日早朝。兵庫県神戸市北区の民家などで3人を殺害、2人に重症を負わせた犯人が、殺害された老夫婦の孫という信じ難いものだった。 16日、兵庫県警に銃刀法違反容疑で逮捕されたのは、自宅で死亡した状態で発見された南部達夫さん(83)と観雪さん(83)夫婦の孫、竹島叶実容疑者(26=17日に殺人容疑で再逮捕)。竹島容疑者は、同事件で重傷を負わされた母親の竹島知子さん(52)と南部さん夫婦とともに4人で暮らしていた。 「達夫さんと見られる男性から警察に通報が入ったのは6時19分で、捜査員が駆け付けた15分後には、すでに夫婦、そして近所に住む辻やゑ子さん(79)も自宅駐車場で息絶えていた。その後、路上で全身打撲の状態の知子さんと、近隣住民の前北操さん(65)を発見。さらに、現場近くの神社で、血が付着した刃渡り約16センチの包丁と金属バットを持った竹島容疑者を見つけ、現行犯逮捕となったのです。竹島容疑者は慌てるでもなく、落ち着いた様子でした」(捜査関係者) 竹島容疑者は逮捕後、「誰でもいいから攻撃しよう、刺してやろうと自宅の包丁を持って行った」などと供述していたという。ただ、母親だけには包丁は使わずバットで殴打しただけで軽症だった。狂気の中でも母には刃を向けられなかった真(まこと)があったのだろうか。同居していた家族は折り合いが悪かったという。 何が竹島容疑者を殺人鬼に走らせたのか。 「(竹島容疑者が)南部さんの家に住むようになったのは、まだ小学生の頃。お母さんに連れられて来たんです。高校卒業後、電子系の専門学校を出て一度は就職したようですが、職場と折り合いが合わずに辞め、いまは何もしていなかった。最近は時々フラッとどこかへ出掛けるところは見ましたが“引きこもりになってしまったんじゃないか”と噂してたんです」(近隣住民) そんな竹島容疑者とは対照的に、南部さん夫妻は集落内で慕われた存在だった。 「一緒に買い物に出掛けたりと、仲がいいという印象。夫婦とも誰からも好かれるタイプ」(別の近隣住民) 一方で、夫婦と竹島容疑者との関係については、こんな話がある。 「元消防署員で署長まで務めたことのある達夫さんは、かなりの資産家とも言われている。孫がそれを知ってか、“財産を相続したい”などとわけの分からないことを言い出し、周囲に相手にされなかったという話を聞いたことがあります」(同) 逮捕された竹島容疑者は銀色のワゴン車の後部座席中央に座り、無表情のまま前をみつめていた。精神疾患が疑われているが、通院歴などは明らかになっていない。
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社会 2017年07月26日 10時00分
浅草・仲見世「賃貸権あります」暗躍する悪徳ブローカーに捜査の手
「ワンダフル!」海外からの旅行者から歓声が上がる。雷門をくぐった浅草の浅草寺仲見世通りには90店弱の店舗があり、夏本番の観光シーズンに向け、連日にぎわっている。いま、その商店街に悪徳ブローカーが出没し、関係者の頭を悩ませているという。 浅草の仲見世通り商店街は、江戸時代に誕生した日本最古の商店街の一つ。関東大震災や戦災での焼失を乗り越え、現在は89店舗が入居している。 「戦後の昭和30年代は、界隈の女剣劇や大宮デン助の『デン助劇場』、生歌謡ショーをやる映画館に全国から客が殺到しました。故・島倉千代子さんの大ヒット曲『東京だョおっ母さん』のフレーズにもあるように毎日がお祭り状態で、仲見世の商店街は歩くのにもひと苦労でした」(浅草出身のマスコミ関係者) ところが、40年代に入るや客足が遠のき、夜8時にはゴーストタウン化することもあった。 「浅草は、当時の国鉄が駅を作るのに反対したために、交通の便は地下鉄の銀座線と東武線しかなく、JRの駅がなかったために客が激減したんです。しかし、つくばエクスプレスの開通や、東京スカイツリーの開業でようやく昔の活気を取り戻したんです」(同) 商店街には人形焼や煎餅屋、お茶、雑貨小物に玩具屋など、いかにも浅草らしい店が軒を並べている。所有者は商店街が浅草寺、建物が東京都ということもあり家賃は安い。平均的な賃貸料は、2坪程度で約15000円と破格だ。 「そのため、どの店も賃貸権は手放さなかったのですが、商店街でも高齢化が進み権利を手放す店主が出てきた。ある商店がその賃貸権を1億円以上で購入したという噂も流れたほどです」(商店街関係者) そこに目を付けたのが、悪徳不動産ブローカーだという。 「『賃貸権あります』と言って、売りに歩いているんです。仲見世の商店街の賃貸権については、東京都の決まりで“(都の認可なく)転貸し、またこの建物賃貸権を譲渡しないこと”とある。それに、商店街組合の認可も必要ですからね。ブローカーが賃貸権を所有することはまずあり得ない。2年前、上野アメ横の商店街で店舗の“又貸し”が問題になりましたが、浅草の仲見世の場合は完全な詐欺。引っ掛からない人が出ないように、警察も捜査に乗り出していますよ」(地元の商店主) 雷門の「風神」「雷神」よ、日本で最も古い浅草の仲見世商店街を守ってくれ。
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社会 2017年07月25日 14時00分
中国人美人姉妹死体遺棄 横浜連れ出しクラブで起きた「Wの悲劇」
中国人美人姉妹に何があったのか。 7月13日、神奈川県秦野市の山林で、一体ずつ遺体が入ったスーツケースが2つ発見されるという残忍な事件が発生。神奈川県警により、翌日、その身元が横浜市中区日ノ出町に住む中国籍の姉妹・陳宝蘭さん(25)と、宝珍さん(22)であると発表された。 これまでの経緯を、全国紙社会部記者が説明する。 「姉妹の共通の友人女性が、5日、6日にかけSNSで連絡を取り合っていたのですが、突如、姉妹の反応がなくなった。そのため不審に思った女性は、7日、姉妹の同居するマンションを訪れたのですが、部屋の鍵はかかっており気配がない。管理会社が110番して警察が調べたところ、行方不明である可能性が高まったのです」 室内は荒らされた形跡もなく、2人の財布は残されたまま。そこで捜査員がマンションの防犯カメラを解析したところ、ある男の姿が確認された。 「捜査関係者によれば、30代の日本人男性が、宝蘭さんが室内にいたと見られる6日午前1時頃に部屋を訪問していたのです。その男は同日の午前10時頃に部屋を出た後、翌7日未明に再び部屋を訪問し、5分ほどしてからスーツケースを持って部屋から出ている。さらに少しして、また部屋へ入り、ポリ袋のような袋をいくつか持って出てきた。そこで、この男性が乗るワゴン車のGPSの記録を調べたところ、秦野市のヤビツ峠付近の県道にたどりつき、数メートル入った山林でスーツケースを発見したのです」(捜査関係者) 2つのスーツケースの遺体は、どちらも折り曲げられ、ポリ袋に覆われた状態で、姉の宝蘭さんは全裸、妹の宝珍さんは普段着を着た姿だったという。 「司法解剖の結果、姉妹はどちらも首を絞められたことによる窒息死で、相当な力で締め上げた圧迫痕が残されていたという。防犯カメラは、男性が部屋を出入りする際、途中でロープ状の物を落とし、慌てた様子ですぐに拾い上げるところも捉えていたそうです」(前出・全国紙社会部記者) 姉妹はそれぞれ2009年と'12年、留学の在留資格で来日。宝蘭さんは横浜市内の服飾デザイン専門学校に通い、留年や休学を繰り返して今年3月に卒業。宝珍さんはゲームソフトの専門学校に現在も在籍していた。しかし一方で、2人はこんな別の顔も持っていた。 「宝蘭さんは専門学校に席を置く一方で、横浜市中区の福富町から伊勢佐木町に点在する風俗店で働き、現在は、いわゆる連れ出しクラブに在籍していたという。最近では宝珍さんのほうも時折、店に顔を出していたようで、この界隈では“スタイル抜群の中国人美人姉妹”として名が知れ渡っていた。そのため2人の消息が分からなくなった直後から、『不法滞在で御用になった』との情報が同業者間で駆け巡ったほどなのです」(同) 姉妹が住んでいたマンションも、この風俗街の目と鼻の先。ソープ街としても有名で、夕方ともなれば夜の街へ出勤するアジア系の女性が多く見られる地域だ。 「中国人系の店が多い連れ出しクラブは、客が店へ行き気に入った女性がいれば、店外に連れ出して近くのホテルで事に及ぶスタイル。クラブと言っても売春がメーンのようなものです。相場は店に対する連れ出し料が5000円〜1万円ほどで、相手の女性に対してはショート(60分程度)が2万円〜3万円で泊まりが4万円。これにホテル代が加わります」(夕刊紙風俗担当記者) そんな中、宝蘭さんは「美人だけど気取るところもなく、人気で指名が途絶えることはなかった」(姉妹を知る人物)というが、そこで出会ったのが、“防犯カメラに映った30代の日本人男性”なのだという。 「宝蘭さんと、客として訪れたその男性が知り合ったのは約5年前。そもそも留学生の在留資格では風俗営業所での労働が禁じられていますが、彼女の場合は妹を養わなければならないという使命感があったようで、不法就労を続けた上に在留期間を引き延ばすために留年をしていたふしがある。その発覚を恐れていた彼女が、30代男性に相談し、3月に専門学校を卒業後に偽装結婚を持ちかけていたという情報もあります。もっとも、前述の通り、最近になっては宝珍さんも店に顔を出し、店関係者は『そのうち妹もいい稼ぎ手になるんじゃないか』と周囲に話していたというから、姉妹で同じような道をたどろうとしていた可能性もあったのではないか」(前出・全国紙社会部記者) いずれにせよ、カギを握る男性はいまだ行方をくらまし(17日時点)、伊勢佐木署に設置された捜査本部では全容解明に向け捜査を進めている。 「男性の方は姉妹の部屋の合鍵を持たされていたようで、宝蘭さんと男性の関係は、すでに店を挟んだ以上のものになっていたことがうかがえる。金で揉めたか、不法滞在に絡む結婚話で揉めたのか…。そんな憶測が捜査関係者の間でも流れています」(同) 本来抱いていた夢から、足を踏み外した末の悲劇だったのか…。
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社会 2017年07月25日 10時00分
丸山和也・参議院議員が政局を斬る! ポスト安倍は誰か
――東京都議選での自民党の惨敗は、自滅との見方が根強いです。 文句なしの負けだね。小池さんの人気は相変わらず高かったものの、選挙戦直前までの世論調査では、投票先が拮抗していて、自民党もそれほど負けないのではないかと言われていた。豊洲移転問題で小池人気にも陰りが見えてきたと囁かれるようになったので、自民党は完全に緩んだね。森友と加計の問題はずっと尾を引いていたが、直前に噴出したスキャンダルが痛かった。豊田真由子の暴言・暴行が出てきて、稲田朋美の失言は法的にも弁解しようがないし、防衛大臣の資質として問題だ。そして、都連会長である下村博文自身のお金の疑惑がダメ押しになった。 俺も3カ所応援に行ったけど、みな最下位ながら全員当選したよ。お礼の電話が掛かってくると思っていたけど、何の音沙汰もないなぁ(笑)。 ――豊田氏はすぐに離党届を提出したが、稲田氏については安倍晋三首相が擁護し続けました。 稲田の場合は、南スーダンの日報問題などでも、以前から管理能力と資質が問題視されていた。国民の多くがそうだし、俺の周りの自民党支持者でさえ「稲田さんは…」と言っていた。「えこひいきの自民党、身内や友だちには優しい安倍さん」そんな評価が定着してしまった。稲田も辞任した方が、彼女自身の政治生命にとってもプラスだったはずだ。内閣改造を控えているとはいえ、こういう雰囲気の中で仕事を続けるのはプラスにならない。記者会見でも死人みたいな顔になっていたね。「このハゲーっ!」の豊田は問題外。埼玉県連のつながりで彼女には何回も会ったことあるけど、あんな一面があるなんて全然知らなかった。バレンタインデーのときにチョコレートをもらったんだけどね(笑)。うちの事務所にいる秘書も、うちに来る前に豊田から「来ないか」とずいぶん誘われたことがあったらしいけど、「行かなくて良かった」と胸をなで下ろしていた(笑)。 ――今後の政治日程としてまず内閣改造、そして秋の臨時国会、来年以降に解散総選挙といった流れです。 改造で下村、稲田、萩生田ら安倍さんの側近は表舞台から消えるだろう。でも現在の内閣や執行部にいる“お友だち”が消えても、次の“お友だち”が内閣入りを狙っている。お友だち軍団はたくさんいるので、“お友だちの順番待ち”のような状態だ。安倍さんを中心に同心円で二重三重にお友だちの輪ができていて、自分が呼ばれるのを待っているんだよね。 近々国会では憲法改正の自民党案を出す予定になっているが、このスケジュールは厳しい。また、改憲には公明党が表向きでブレーキをかけるだろう。そして解散総選挙だが、民進党が弱いから都議選でボロ負けしても政権はすぐには倒れないという安心感がある。だから、大きな執行部批判も起きていない。都議選は突風でやられたという感じだ。今のうちに立て直して、都民ファーストの失点を待っているのかもしれない。衆議院解散はしばらくできないだろう。 昨年秋、党総裁任期を「連続2期6年」から「連続3期9年」に延長する案を決めたけど、運命的にはあのときが安倍さんのピークだったと俺は見ている。任期を延長したのは東京オリンピック・パラリンピックと憲法改正のため。オリンピックは華々しいイベントだけど中身はないし、むしろ知事が主役。歴史的に重いのは改憲の方だ。 ――改憲案では、九条の二項を変えずに、三項を付け加えるとしています。 安倍さんはその方が通りやすいと思っているのだろう。自衛隊の存在を認めることに国民の反対はないのだから、その条文を入れようというわけだ。でも、現実を追認しただけで何も変わりがない。あれは党内右派の議員たちや原則論者からも中途半端だと批判されている。自衛隊じゃなくて「国防軍」にしろと言っている人もいるくらいだ。しかし、安倍さんは珍しいことにソフト路線で行こうとしている。政権維持が念頭にあるのかな。しかし現実的には賢い。 ――自民党はポスト安倍も考えなければならないです。 安倍さんが次の総裁選に出ないとなれば、候補はたくさん出てくるのではないか。岸田、石破、野田など4〜5人は出てくる。麻生さんも総理大臣1回目は失敗しているから、やる気満々だろう。第2次安倍内閣発足当初、麻生さんは「次はオレだ」とオフレコ発言をしていたと聞く。最近は「(安倍政権を)支えます」とばかり言っているからいっそう怪しい。麻生派は第2派閥になったからね。毎晩寝る前に1時間身体トレーニングをしているらしいよ。 石破さんは議員票が取れないから、今のままでは勝てない。前々回は盛り上がったけれども。岸田さんはしっかりしているし、答弁にソツがない。厳しいことを言われても、うまくかわせる。勢力は小さいけど、石破さんより票が集まるかもしれない。政治家として線は太くは見えないが、誠実で人柄はいい。安倍さんみたいに思い込みが強くて突っ走ろうとはしない。自民党はまだまだ人材が豊富だから、安倍さんの出馬の有無にかかわらず、元気のある総裁選を活発にやる方が自民党のためになる。 ――石破氏には国民からの期待もある程度あるが、自民党内ではいまひとつ人気がないようです。 一対一で話したときに面白くないんだね。バカとか冗談、調子いいことを一切言わない。議員の中での社交術が下手というのもある。麻生さんとは対局的だ。 俺は麻生さんと会ったときに「ソーリ、ソーリ」と声を掛けるんだけど、本人も笑って応じてくれるし、盛り上がる。ノリがいいんだよ。石破さんにはそういう冗談を言えない雰囲気がある。真面目な原則論者なんだよ。国民的にはそれなりの待望論もあるんだけど。麻生さんは不真面目とも取れる言動も多いが、難しいことを言わないから得をしている。 あと、石破さんは自民党を1回離党したから、古い人たちからは裏切り者だと思われている。頭を下げれば別だけど、それもなかなかできない。優柔不断で決断しない人だという評判もある。テレビでは政権批判をしているけど、どこか遠慮がちだ。もっと厳しく言わないと。村上誠一郎くらい激しくやればいいんだよ。そうすれば仲間が増える。総裁任期を改定したときも「どうかと思う」くらいしか言わなかった。慎重過ぎるし、反撃しない。派閥作りも例えは悪いが「小銭を貯めて貯金をしている」みたいなイメージだね。 やる気なら今こそダイナミックに反乱の狼煙を上げるべきだ。もちろん、強烈な石破叩きが始まるけど、それを乗り越えなければ、永遠に総理の目はないよ。 ――都民ファーストは国政にも影響を与えそうです。 中長期的には、都民ファーストが国政進出するかどうかというのが大きい。今回当選した人たちがすぐに国政に出てくることはないだろうけど、それだけの勢力基盤があるわけだから、他の政党からの離党者が集まってきて国政に利用しようと画策を始めるだろう。 すでに小池に国政進出を促している国会議員もいるようだけれど、焦ると小池自身の首を絞めることになるので下手な話には乗らない方がいい。都政で成果を出して、力をためておくべきだ。小池さんにとって危険なのはそのあたりかな。オリンピックを成功させて、そこでスパッと辞めれば伝説になってカッコイイんだけど、そうもいかないだろうね。 それにしても、今回の都議選は候補者が政策らしきことを語らなかった。作家の浅田次郎も言ってるが、日本の政治、文化は本質的には娯楽、日本は良くも悪くもいいかげん社会なんだよ。必死で騒ぎはするが、原則的には生命、信条を懸けた真剣さがないんだな。文学でも同じだ。豊田の「ハゲーっ!」の方が面白いから、みんなそっちに飛びついちゃうんだよ(笑)。(文中敬称略)丸山和也1946年兵庫県生まれ。東京を中心に法律事務所を構える。日本テレビ系人気番組「行列のできる法律相談所」レギュラー出演中の2007年、参議院選挙に自民党から出馬し当選。現在2期目。自民党法務部会長、自民党参議院政策審議会副会長、自民党司法制度調査会会長等を歴任。「丸山総合法律事務所」代表。
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社会 2017年07月24日 14時00分
スマホ視聴でも徴収 批判殺到のNHKネット受信料
NHKがテレビのネット受信料の導入を本格的に検討し始めたことに対し、市民や民放関係者から反発が噴出している。 「最近、パソコンやスマートフォンでもテレビ視聴できるような環境が整い始め、特に若者がそちらに流れようとしている。そのため、テレビを持たないNHK視聴者数が急増するのではないかという懸念もあり、対策が急務ということもある。しかし、それ以上に大きいもう一つの背景は、経営基盤を安定、拡大したいというNHKの思惑があるのです」(全国紙社会部記者) NHKは、東京五輪の前年の2019年をメドに、テレビ放送とネット放送の常時同時配信の本格始動を目指すという。 「その準備を着々と進めているわけですが、二つの面をクリアしなければならない。一つは法的な問題。もう一つは、逃げ得は許さない形を整えること。公平性と必要性を視聴者に納得させなければならない」(同) まず、法的とはどういうことか。テレビ放送の電波権やNHKなどを管轄する総務省関係者が言う。 「現状のままでは、NHK受信料制度は一般的な放送を前提としたもので、ネットオンリーで視聴する人は想定されていない。そこで今は、有識者など幅広い層からなる『受信料制度等検討委員会』を設置し、様々な意見を聞いた上でネットのみの視聴者でも受信料を徴収できる法改正までこぎつけたいとしています」 二つ目の公平性に関しては、徴収率の安定だ。現在の全国のNHK受信料の徴収率は、78.2%と年々アップしている。 「従来のNHKには、“取れなければ仕方がない”という姿勢があった。しかし、それを許していると真面目な人がバカを見る。ゴネる人は、地上波契約月額1260円、衛星契約だと同2230円得することになる。放置すればネット受信料徴収などおぼつかない。そのためにNHKは、ネット時代も想定した上での徴収率アップを徹底し始めているのです」(業界関係者) 例えば、ホテルの『東横イン』の客室ごとのテレビ受信料徴収を巡る裁判では、今年3月、NHKが地裁で勝訴している。これにより『東横イン』とグループ会社は、235あるホテルの全室に設置するテレビ約3万4000台分について、未払いとなっている約2年間の受信料、19億3000万円の支払いを命じられた(その後『東横イン』が控訴)。 しかし、いくらネット時代とはいえ、NHKが想定するように、今後、ネットでテレビを視聴する人が急増するのか。NHKでは、テレビを持たないスマホユーザー向けに、番組を見られるアプリをダウンロードさせるような環境を作り、ダウンロード者に徴収をかける仕組みを考えているという。また、すでに受信料を払っている家庭においては無料にするなどの料金体系も考慮し準備を重ねている。 しかし、放送関係者はこう懸念する。 「見たい番組ならお金を払うが、他の見ない番組までのために月額料金を支払うことに抵抗する声は大きい。そこをNHKがどう捉えるか、です」 さらに反発するのは、民放各局だ。 「一般放送とネットの同時配信には、数十億円の新たな設備負担が掛かる。NHKは受信料と国の予算で成り立つが、もちろん民放はそうはいかない。いまはただでさえスポンサー集めに四苦八苦している状況なのに、民放が追随する流れになった場合、投資に見合ったものが得られるのか」(民放関係者) テレビ関係者に言わせると、NHKが昨秋から3カ月間実験的に行った同時配信によるネット視聴者は、たった6%だったという。これはドラマなどの「見逃し配信」の視聴率8.5%をも下回る数値だ。 「スポーツ中継などは、テレビで見られない環境の人たちが、空き時間にネットで見るために同時配信のメリットはあるが、ドラマやバラエティー番組では同時配信の意味があるのか。見逃し配信などは各民放も努力している」(同) NHKだけが同時配信というのは民放が許さないし、国もその考えはない。加えて、視聴者側からはこんな声も聞こえてくる。 「NHKは現在、新社屋の建設計画を進めていて、'20年に着工予定。当初の予算が3400億円とバカ高で批判が殺到し、1700億にまで圧縮された。それでも民放の社屋は500〜1000億円だから、それでも豪華。単に視聴者からお金を奪うばかりでなく、世間が納得する経営や受信料を熟考しなければNHKは国民から愛想を尽かされる」 今やテレビCMよりネット、SNSのほうが消費者のCM反応が高いケースも増えつつある。テレビ放送のネット受信料徴収論浮上は、再度、テレビ放送の在り方を見直すいいタイミングかもしれない。
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社会 2017年07月24日 10時00分
天下の猛妻 -秘録・総理夫人伝- 岸信介・良子夫人(下)
岸家の系譜を見ると、鳩山一郎のそれが秀才揃いだったと同様、こちらもとんでもない秀才揃いだった。戦後政治史を振り返ってみると、この岸、鳩山一族が“二大秀才一家”となる。 岸信介は東京帝国大学を主席で卒業。成績平均点は89.1で、それまでの東京帝大卒業生の最高点であった。また、岸の兄・市郎は海軍兵学校から海軍大学を出て中将までいったが、兵学校での成績平均点はじつに97.5、「海軍有史以来の秀才」と言われた。弟でのちに首相となる佐藤栄作も、五高から東京帝国大学を卒業している。ただし、岸の孫となる安倍晋三現首相だけは小学校から大学まで「成蹊」で学ぶなど、“異質”と言える。 さて、まれに見る秀才だった岸は大学卒業後、農商務省に入り、トントン拍子で出世したうえ、44歳の若さで東条英機内閣の商工大臣になったが、大臣になる前は満州重工業の実業部に所属するなど、「満州国」経営の経済的基盤を築いている。満州を支配したのは「二キ三スケ」と言われ、「二キ」とは東条英機、星野直樹が政治面で、「三スケ」の満鉄総裁の松岡洋右、満州重工業の鮎川義介と岸が、経済面でラツ腕をふるった。岸はそのときまだ39歳、いかに“出来ブツ”かが分かろうというものである。 その岸が政界入りしたのは、昭和28年4月の総選挙だったが、選挙区は旧山口2区。この選挙区には、すでに4年前に初当選を飾った実弟の佐藤栄作がおり、“骨肉の争い”を演じたのだった。当時の選挙戦を知る関係者の証言がある。 「岸と佐藤は兄弟と言えど選挙戦は別、不倶戴天のライバルと化し、血みどろの戦いを演じた。佐藤陣営が『岸は戦犯だった!』とブチ上げれば、岸陣営は『佐藤は“造船疑獄”の汚職でわが郷土に泥を塗った!』とフレ回るといった具合だった。奥方はどうだったかと言えば、佐藤の寛子夫人はトラックの上で堂々の演説をやってみせたが、一方の岸の良子夫人はひたすらおじぎをするだけだった。結局、選挙戦は“演説”より“おじぎ”が制し、岸が佐藤より上位で当選を果たした。ソツのない夫に従っていれば間違いないという良子夫人の心得がうかがえたものだった」 こうした“日本型女房”の一方で、良子は相当のハラのすわりも見せている。世情騒然の中で「安保条約」を成立させ、退陣した岸ではあったが、右翼に太股を刺されるという事件に遭遇した。 事件を取材した当時の政治部記者の証言がある。 「良子夫人は、一切、取り乱さなかったと言います。なぜなら、かつて戦犯として岸が逮捕のため連行される際、そばにいて涙ひとつこぼさなかったように、平素から夫の命は政治家として国に捧げたものとの思いが強かったからだった。一方の佐藤栄作も首相在任中、世田谷の私邸に短刀を持った男に押し入られるという事件があった。男は捕まり、佐藤も無事だったが、あとでその件を知らされた寛子夫人のほうは1日中ガタガタと震えが止まらなかったそうです」 岸にとっての良子夫人は、まさに「静かなる猛妻」と言えたのだった。 その岸は政界引退後、80歳を超えて写経を発願、じつに1150巻を写し終えて、昭和61年、これを高野山に奉じた。すでに良子夫人は昭和55年6月、79歳で他界していた。 岸の晩年を知る政治部記者の、こんな思い出話が残っている。 「岸は平素から、『政治家にとって一番大事なのは“出処進退”だ』と言っていた。ために、引退後は派閥も解消した。写経については、自らの来し方を振り返るとともに、やりたい放題やらせてくれた良子夫人への感謝、悼みもあったそうだ。一方で、エネルギッシュな面は晩年も変わらずで、しょっちゅう血のしたたるようなビーフステーキを口にしていた。『(息子の安倍)晋太郎を首相にするのが、オレの“最後の道楽”だ』と言っていた」 写経の大願を終えた岸は、91歳の誕生日を3カ月後に控えた昭和62年8月7日の昼下がり、息を引き取った。「昭和の妖怪」とは言われたが、晩年を過ごした静岡県御殿場の自宅、書画、骨董、株券、ゴルフ会員権などの遺産総額は約4億円と、意外に少なかった。権力に対する執着心は凄まじかったが、金銭欲、物質欲はそれほどない人物だったことが浮かび上がる。 岸にとっての「最後の道楽」、長女・洋子と結婚した安倍晋太郎は、岸の死後、志半ばで病に倒れ他界、その“完遂”を見届けることはできなかった。その果たせなかった「最後の道楽」は、晋太郎の息子・安倍晋三が、岸の死後19年目にして実現してみせたということだった。 終生、夫に従うことで精一杯だった良子夫人はこれを天上で見届け、夫の「最後の道楽」の“完遂”に手を取り合っているものと思われる。=敬称略=小林吉弥(こばやしきちや)早大卒。永田町取材48年余のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『決定版 田中角栄名語録』(セブン&アイ出版)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。
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