社会
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社会 2009年03月23日 15時00分
ポスト小沢 本命は岡田克也副代表
公設秘書の逮捕でピンチが続く民主党の小沢一郎代表。秘書の拘留期限が切れる明日24日にも、進退を決断する可能性がある。これまでは反小沢グループから表立った「小沢降ろし」の動きはないが、世論の反応や捜査の進展次第では、自ら「辞任」の選択肢があると見られてきたからだ。それだけに水面下では「ポスト小沢」へ少なからぬ動きが出ている。鳩山由紀夫幹事長や菅直人代表代行の名前も挙がっているが、党内は岡田克也副代表の待望論が強まっている。さあ、どうなる民主党。 「やめる必要はありません。政権交代で政治とお金の問題はクリアになる。国民は落ち着いて、国を良くするためにどうしたらよいかという視点で考えてもらいたい。政権がかわって政策転換とかすると困る人たちがいるのではないですか」 田中真紀子議員はテレビ朝日の「サンデープロジェクト」出演の際に、例の歯切れのいい口調で小沢擁護論を展開した。小沢代表のシンパとして知られる真紀子サンだけに小沢氏擁護は当然だが、反小沢グループも目下のところ表立った「小沢降ろし」は控えている。 これは衆院選の態勢作りを、小沢代表が先頭に立って仕切ってきただけに「衆院選を考えると、今は小沢代表の潔白を信じるしかない」(民主党関係者)という意見も、いまのところは多いからだ。もっとも水面下では「このままでは小沢氏はもたないとみて、ポスト小沢をさぐる動きは強まっている」(政界関係者)という。 「国策調査だ」と小沢氏は特捜部との全面戦争も辞さない構えだが、党内からは「政権交代を目前に、代表に留まることの悪影響も考えてほしい」の声も出ている。小沢氏と共にトロイカ体制を組む鳩山、菅両氏は、そんな代表辞任論の火消しに躍起だが、これも政界関係者に言わせれば「窮地をサポートすることで、小沢氏からの禅譲を期待している」からなのだそうだ。 別の政界関係者は「一昨年の大連立騒動の際はあっさりと辞意表明した。今回もその可能性はある。小沢氏の執念は総理の座より“政権交代”にある。その政権交代に悪影響が出てくれば、あくまで居座るなんて選択肢はないはずだ」と解説する。その時、後継に誰を推すのかが注目されるわけだ。 政党用ポスターでも小沢代表とのツーショットを避けて、菅代表代行やミスター年金の長妻昭議員を選択する動きが一部では出ている。すでに小沢離れは深く静かに潜行している。政権奪取のために小沢体制を容認してきた反小沢グループが、「かばいきれない事実が出てくれば、(小沢降ろしに)舵を切る可能性は大いにある」(政界関係者)情勢なのだ。 もっとも複数の民主党関係者は「後継問題でガタガタすれば政権担当能力がないと、衆院選で国民からそっぽを向かれる。不協和音を出さない形で新代表を選ぶとすれば、選択肢はひとつしかない」という。そこで浮上するのが岡田副代表との観測だ。「ハッキリ言って鳩山、菅両氏は賞味期限切れ。政治と金が問われる選挙となればクリーンなイメージの岡田氏しかいない」のだそうだ。 確かに岡田氏はカタブツといわれるほど清廉潔白なイメージが強い。また、特定グループに属していないため、小沢グループの受けも決して悪くはないし、反小沢グループからの支持もある。 もっとも岡田氏自身は「まだ動く時期ではないと判断しているのでしょう。『今は党が結束して困難を乗り越える時期』と一応は小沢氏を支える姿勢だ。ポスト小沢の声には慎重そのものです」(政治記者)と“やる気”を封印している。 果実は黙っていても落ちてくるということか。
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社会 2009年03月23日 15時00分
東京マラソン 石原知事“セレブランナー枠”構想に意欲メラメラ
3年連続で東京マラソンの号砲を鳴らした発案者の石原慎太郎都知事は22日、来年以降の大会運営組織を法人化する決意を示した。背景には出走するための競争率が7.5倍と厳しい抽選になったことがある。一般参加費より多く払ってでも走りたいという熱狂的ランナーの要望を受け、“セレブランナー枠”を設ける構想が熱を帯びてきた。貧乏人は走れなくなるのか。 最終ランナーを出迎えた石原知事は「毎回感動する。やってよかった」と満足感いっぱい。次回大会に向けた課題を「組織の法人化」と言いきった。 この日、知事を感動させた約3万5000人のランナーの陰には、抽選にはずれた7.5倍の市民ランナーがいる。フルマラソンは前回大会より約10万人応募が増え、22万6378人中、当選した3万人が走った。第1回大会は3倍、昨年の第2回大会は4.7倍と競争率は激化の一途をたどっており、くじ運の悪いランナーの究極の救済策をとるためにも法人化する必要があるという。 石原知事は19日の会見で東京マラソンについて「何十万円出してもいいから走らせてくれ、ってランナーがいるんですよ。これは組織を法人化しないとできない。仮に10〜20万円出しても走りたいって人がいるならばその額をありがたくいただいて、(正規の出走料を引いた)残りの9万円なり19万円なりをチャリティーに使うのは、いまの組織じゃできないんでね。マラソンの主体者を法人化することでちゃんと監査も入れて(組織運営を)透明なものにする努力をする」と構想を明かしていた。 あと1000人ならば出走枠を増やせるとの見込みを示し、「プラスアルファする人がいたら(金額の)高い順にいただいて、だんだんせり上がって『100万円でもいい』って人がいるかもしれない。そういう人には出してもらってだな、有効に使えたらと思っている」とオークション方式でセレブ枠を新設することに意欲をみせた。 金持ちを対象とする構想だけに庶民にはシラける話。しかし、差額がチャリティーに使われるのであれば結構なこと。果たして実現なるか?
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社会 2009年03月23日 15時00分
東京マラソン 仮設トイレ600基で立ち小便完封
仮設トイレ600基で立ち小便完封!! スタート地点の都庁前には仮設トイレ600基を設営。人気アニメ「機動戦士ガンダム」のシャア・アズナブルに扮した仮装ランナー(45歳会社員=群馬)は、早めの時間帯から新宿中央公園内のトイレを30分待ちしてすっきり。無事、スタートした。 07年2月の第1回大会では悪天候と冷え込みにより、スタート前に同公園仮設トイレ前に長蛇の列ができ、タイムリミットを迎えて立ち小便を強行するランナーが相次いだ。曇天だったため今年も危ないのでは…と行列中のランナーに取材をしていると、待ち時間を逆算して並んでいるというシャア氏が「この衣装は脱ぎにくいのでレース途中ではトイレに行けない。地球のトイレは待ち時間が長いけど、軍人だから大丈夫」とユーモアたっぷりに答えてくれた。 一時は各個室前に30人待ちの列ができたが、スタート前に公園内トイレの行列はなくなり、見事立ち小便は封じられた。
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社会 2009年03月23日 15時00分
東京マラソン 混沌する社会を反映し、市民ランナーのコスプレも迷走
混沌する社会を反映し、市民ランナーのコスプレも迷走気味だった。 アキバのホコ天がダメならマラソンか!? 今年も大勢の市民ランナーによるコスプレが大会をさらに盛り上げた。回を増すごとに仮装の芸も細かくなってきている。いまやピカチューのかぶり物くらいでは目立たないのだ。 今年目についたのは「愛」という字を前立にあしらった兜をかぶった複数のランナー。NHK大河ドラマ「天地人」のコスプレだ。その中の一人は「妻夫木くんの顔までつけました」というこだわりぶり。 その他にもベジータとピッコロ大魔王のコンビに、キュートなメイドさん。上半身ビキニで走るセクシーお姉さんコンビに、葵の御紋をふりかざす水戸の御老公様までおられたりと、混沌する社会の閉塞感を晴らそうと、実にゆかいなランナーたちが42.195キロの道のりを飾った。 東京・秋葉原の歩行者天国は昨年6月の無差別殺人事件以降、中止され再開のめどは立っていない。行き場を失ったコスプレイヤーが走力を鍛え、東京マラソンで脚光を浴びるようになる!?
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社会 2009年03月23日 15時00分
経済偉人伝 早川徳次(シャープ創業者)(15)
1カ月のうち、1日か15日のどちらかが休みで、休日の昼食には尾頭(おかしら)付きの魚が出た。丸1日休みだが、住込みなので誰か用があれば言いつけられた。盆と正月は宿入りとも藪入りともいって、実家に1泊が許されていた。 徳次が13歳になった年の、盆の宿入りの時のこと。他の兄弟子と同じように、徳次もおかみさんにもらった新しい着物を着て、新調のゲタを履いて長屋に向かった。 芳松からそれぞれの実家へ手土産として三盆白(砂糖の種類。結晶が小さく口に入れるとすぐ溶ける)の砂糖袋1斤(600グラム)が渡され、小遣いも30銭貰った。徳次達は喜んで朝食をすませると店を出た。けれども、東大工町へ近付くにつれてだんだん足が重くなり、朝食の時の浮いた気分はすっかり沈んでいくのだった。 長屋に帰ったところで歓迎してくれるわけではない。熊八と“ねえさん”は口論の絶え間がなく、相変わらず暗い家の中でいろいろ気を使わねばならないことを思うと、気分は暗くなる一方だったが、他に行くところもない。仕方なく出野の家に帰った。土産の砂糖、小遣いの30銭、全て熊八に渡した。 翌日、店に帰ろうとすると、雷鳴とともにひどい夕立になった。雨具を探すと唯一、骨がバラバラになった破れ傘があったので、それを頭から被るようにして新しいゲタを脇に抱え、着物は端折(はしょ)って裸足で本所まで走った。 ずぶ濡れで坂田の家に着くと、兄弟子たちはすでに戻っていた。それぞれが皆、親元から親方にと土産の返しを持たされていて、芳松夫妻に挨拶と共に渡しているところだった。徳次には親元のそんな心遣いなどあるわけもなく、また貧乏の辛さを痛切に思い知らされ、話の輪に加われずにいた。 すると芳松が徳次には全く覚えのない包みを取り上げて「徳や、これお前ンところのお土産か。いや、有難う。今度帰ったら、よく礼を言っといてくんな。結構な物を有難うござんしたってな」と、他の者たちにも聞こえるような大声で言う。
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社会 2009年03月21日 15時00分
永田町血風録 小沢氏“居座り”なら民主党分裂危機
民主党の岡田克也副代表の言動がが然、注目され出した。民主党は次の選挙の顔を代表の小沢一郎と決めて、ポスターも「国民の生活が第一。」をキャッチフレーズに大いにPRしていた。 しかし小沢の秘書と、同じく側近の石川知裕衆院議員が政治資金規正法違反とその疑いで逮捕、事情聴取されたことで、民主党のイメージが悪くなってしまっている。 党内にも小沢に対するモヤモヤが霞(もや)のようにたなびいている。「思い切って若手による政策集団を…」といった声を党内から発しているのが、もう一人の副代表、前原誠司の取り巻き。 そこには、小沢が代表を辞めずにこのまま選挙に臨もうとしていることへの反発がある。 岡田が「日米両政府高官が交わしたとされる沖縄返還に関わる『密約文書』については政権交代が実現すれば、これまで日本政府が『密約はない』といっていたものを全部出す」と明言。これは、西松建設からの献金に関して十分な説明責任をしない小沢の曖昧(あいまい)さを皮肉って言ったものとも取れる。 また、前原の取り巻きも小沢への献金の多さに「あれでは選挙になったら、国民に『国民の生活が第一。』だなんて言えなくなってしまう。民主党のイメージダウンというか、昔の自民党の金権政治そのものの印象はぬぐえない」と、すっかり困惑しきっている。 両副代表のこうした意思も考えてのものかどうかは知らないが、民主党の若手議員の間からは独自に政策集団を作って選挙に対応しようとする動きが出てきている。 「小沢がもっと明確に説明責任をしないと、民主党は四分五裂してしまいかねない。そんな蛮行も見え隠れする」と自民党のある派閥幹部は、こう言ってほくそ笑んでいる。 その自民党だが、各派閥は民主党の分裂含みの党内情勢に注目している。4月か5月に行われるといわれている総選挙後を、にらんでだ。 「もし自民党が勝てば、自民党内での派閥争いはいま以上に激しくなる。自分たちの派閥の人数をいかに増やすか。いってみれば民主党の動きを気にしつつ、自派の勢力増強を考えているんだ」(自民党関係者) また別の自民党関係者はこう言う。 「どっちもどっちだよ。まさに自民党も民主党も目クソ鼻クソ。まあ、それにしても共産党と社民党の存在感はないね。アフリカのソマリア沖の海賊対策で海上自衛隊の護衛艦が2隻出港した。ところが、この共産党と社民党は『憲法上問題あり』と相変わらずの物言い。時代錯誤もいいところ。こんな野党と共闘したいと小沢一郎が公式に発言していることも、岡田や前原を刺激しているのは間違いない」 選挙予想を前にして、逡巡する与党と野党。その上、与野党ともに朝令暮改とあっては、国民はたまったものではない。(文中敬称略)
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社会 2009年03月19日 15時00分
経済偉人伝 早川徳次(シャープ創業者)(14)
ある冬の日。その日は雪が降っていた。徳次は、いつものように地金問屋へお使いに出された。地金を背負っての帰り道、空腹を抱え、寒いのに足袋(たび)も履いていない。肩に食い込んだ地金の重さに息が詰まりそうだった。日本橋から両国橋までやっとの思いで辿(たど)りついた。 両国橋とは武蔵と下総の両国を結ぶところからの命名である。両岸は江戸時代から盛り場として栄えていた。明暦の大火の後、隅田川に初めて架けられた橋で、長さ170メートル強、幅10メートルほどの当時としては大きな橋だった。明治37(1904)年には鉄の橋に造りかえられているが、この日、徳次が渡ったのは木製の太鼓(たいこ)橋だった。 太鼓橋の僅かな傾斜が徳次にはきつく、足を踏ん張りながら、一歩、一歩、滑らないように気をつけて進む。橋の中ほどで息を整えている時に、以前誰かに聞いた“鋳掛屋(いかけや)松五郎”の話をふと思い出した。松五郎という鋳掛屋(鍋などを修善する職人)が、ある時、しがない職人などやっているより太く短く世の中を渡ってやろうと決意し、橋の上から道具を投げ捨てて大泥棒になったという話だ。 “松五郎のように荷物をおっぽり出して、このまま家に帰ってしまおうか”、そんな考えが脳裏をよぎったが、それが無理なことは分かっていた。 家は極貧だったし、義母は帰ってもご飯を食べさせてくれないどころか、どんな酷(ひど)い目に遇わされるか、分かったものではない。 “辛いけれど3度のご飯を食べさせてくれる親方の所のほうがずっといい。辛抱しよう…”。そう思い直し冷たい雪の降る中を、また地金を背負って歩きだした。 徳次は後に“雪の両国橋は当時10歳だった私には長い長い橋に感じた。しかし、この橋を越えたことが今日の幸せな道を通れる因(ちなみ)となったのだと思っている”と回想している。
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社会 2009年03月19日 15時00分
永田町血風録 自民が恐れる民主党代表の“顔”
解散・総選挙モードに突入した。選挙の場合、ポスターの占める役割は大きい。自民党は麻生太郎総裁で闘うのか、民主党は小沢一郎代表か。 「両者とも候補者には歓迎されていないんだよ。自民党はすでにポスト麻生が云々(うんぬん)され、その名前が浮上していることもあり、街頭のポスターには麻生の顔が入っていないものが出ているなぁ…」 街頭のポスターを眺めながら、街行く人々はこんな話をしている。 現段階では自民党も民主党も、とくに民主党は代表の小沢が大いに幅を利かせていたが、秘書が逮捕されたこともあって、党内から公然と「小沢では選挙は闘えない」という声も、漏れてきている。 そこで急浮上してきたのが岡田克也元代表であり、前原誠司前代表。この2人を候補者のポスターに起用しようという案もある。「小沢よりも無難」というのが、その理由だ。 自民党も麻生と一緒では、「内閣の支持率が下がっているのに、同じポスターに並ぶのは勘弁してください」と拒む候補者が徐々に増えてきている。そこでにわかにクローズアップされたのが小池百合子だ。 「ポスターで小池百合子さんと並ぶのなら、どこへ行っても恥ずかしくない。それにインパクトもあるしね」(立候補予定者) 自民党の“顔”は小池というわけだ。その次なる人物は石原伸晃であり、小渕優子。少子化担当相の小渕は現在第2子を身篭っているのも、縁起がいいというわけで手を挙げる人も多い。 珍現象は都議会議員と組む候補がいること。7月に都議選があるので、その相乗効果に期待してらしい。 「都議選の結果によっては、自分の選挙もノッていけるんです」(前出・立候補予定者) しかし、そんな選挙前の動きで自民党がもっとも頭を痛めているのが、民主党の小沢の去就だ。もし小沢に何かあって代表に岡田が就任したら、自民党は今以上に立場が悪くなり選挙は完敗を覚悟しなければならないからだ。 自民党有力者の1人は「願わくば小沢のままでいてほしい」と民主党代表が変更されないことを祈っている。 そんな不安材料があるのなら、自民党は総裁を小池にするほうが、より選挙に勝利する方程式になるのではないか。小泉純一郎が、ポスト麻生は小池だ、というようなことを示唆したのは、自民党に勝たせたいという元首相なりの援護射撃なのかもしれない。 同じく元首相の森喜朗は、「慌てずじっくり備えて、ここまで来たのだから、任期いっぱいまで(麻生が)やって解散なんかしなくてもいいのではないか」と語った。自民党の若手の間では、森に対して「時代の読めない人」というレッテルが貼られてもいるが…。 民主党が岡田代表になったら選挙は厳しい、というのが自民党サイドの頭痛の種なのだ。(文中敬称略)
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社会 2009年03月19日 15時00分
橋下知事 近畿・四国知事連合結成!?
大阪府の橋下徹知事(39)は18日、香川県が国土交通省「香川河川国道事務所」(高松市)の移転先となる庁舎の改修費を負担することについて政府に噛み付いた。「国は詐欺集団だ!」とすごい剣幕だ。しかし、他県である香川のことで橋下知事がなぜそこまで怒るのか? 背景には、国に対抗するための“近畿・四国知事連合”の野望がちらつく。 橋下知事の“守備範囲外”激怒は、府庁で記者団の質問を受けて飛び出したもの。香川県が、地方自治体関係者のあいだでは悪名高い「国直轄事業負担金」として国交省の出先機関庁舎の改修費約20億円のうち約7億円を支出することについて「法律上規定があっても県議会に分かるように説明せず、税を徴収するのは言語道断。国は詐欺集団だ」と切り捨てた。 それにとどまらず「香川県には頑張ってもらいたいし、一緒に闘いたい」と共闘を呼びかけた。 国直轄事業負担金とは、国の公共事業として地方に道路やダムを整備する場合、受益者負担として都道府県や政令指定都市が一部負担しなければならない制度。大きな事業であればあるほど拠出する金額も増える。 全国的に地方自治体財政がひっ迫している中、「いらない」ものをつくるために金を出さざるを得ないケースもあり、橋下知事は制度廃止論者。この日も持論を展開したうえで、地方が連帯して国に負担金制度の見直しを求めるべきだとの考えを強調した。 これに先立ち、全国知事会(麻生渡福岡県知事)は制度見直しのプロジェクトチームを立ち上げ、16日に初会合を開いたばかり。同チームの座長は二井関成山口県知事で、宮崎県の東国原英夫知事ら18道府県知事で構成し、橋下知事もメンバーに入っている。東国原知事は「負担廃止で公共事業の総量が減ることを懸念する」と慎重派。一方の橋下知事は即廃止論者の急先鋒で、国の事業決定に関与できないまま多額の支出を強いられることが我慢ならないとして廃止を要求している。 香川県のことにもかかわらず噛み付いた背景には、全国知事会のなかでも近畿・四国をまとめあげて発言力を強めたいとの狙いが透けてみえる。 東の石原慎太郎東京都知事や東国原知事に比べれば、発言が青臭く、軽量とみられがちな橋下知事。今回の件で主張していることは弱者の立場で放った正論だけに、“近畿・四国連合”で勢力拡大となる可能性はある。
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社会 2009年03月18日 15時00分
沈黙の艦隊ソマリア沖派遣のダークサイド
“海賊退治”のため海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」(4650トン)と「さみだれ」(4550トン)がソマリア沖に向けて航海中だ。海賊対処法案の成立を待たず、領海侵犯を想定した自衛隊法の海上警備行動発令という脱法行為。政府による憲法違反である。諸外国にへいこらする八方美人の政府のために、2隻の護衛艦に乗る約400人が危険にさらされようとしている。武器を使わずに海賊を追い払わなくてはならない“沈黙の艦隊”のダークサイドを追った。 2隻の護衛艦は4月上旬、ソマリア沖に到着する予定。ロケットランチャーなどを装備した海賊船が待ち構える海域で、なるべく武器を使わずに商船を護衛しなければならない。いかに高性能な護衛艦であっても最善のディフェンス策を取ることができなければ、その能力を最大限発揮することは難しい。かようにも、海賊の武装高速艇VS“沈黙の護衛艦”の構図には不安がつきまとう。 野党はこぞって政府の場当たり的な姿勢を批判している。法治国家の政府が率先して脱法行為をしているのだから見逃すわけにはいくまい。政府は「海賊対処法案」成立までのつなぎというが、衆参両院のねじれが解消したわけではなく先行きは不透明。いいかげんなものである。 新法案の最大のポイントは、警告射撃を無視して商船に接近する海賊船を停船させるための船体射撃を新たに認める武器使用基準の緩和だ。 政府は「海賊は国や国に準ずる組織ではなく、海賊に対する武器使用は憲法が禁ずる海外での武力行使に当たらない」と強弁。しかし、山口大の纐纈厚教授(近現代史)は「海賊対策を前例に、ほかの自衛隊の海外活動でも武器使用基準を緩和したいという思惑が透けてみえる。なし崩し的な緩和には歯止めが必要だ」と警告する。 実際、共産党と社民党は強く反発。民主党の直嶋正行政調会長も「現行法で海上自衛隊を出すことには無理がある。新しい法律できちっと対応すべきだ」と法整備の必要性に言及している。 こうした状況下、自衛隊サイドからも不安を訴える声が聞こえてくる。「とりあえず海上警備行動でという発想は疑問が残る」と自衛隊幹部。防衛省幹部も「つなぎのはずの海上警備行動が恒常化し、出口を見失うのでは…」と心配する。 海上警備行動には警察官職務執行法が準用されるため、海賊船に危害を加える射撃は正当防衛か緊急避難に限られる。立証責任を課せられるのは海自側だ。そもそも海外での武力行使は明確な憲法違反であり、戦後平和を築いてきた非戦国ニッポンの歩みに逆行する。それを「とにかく行け!」的に背中を押され、手足を縛られたまま海賊相手に命をかける乗組員はたまったものではない。 海賊に遭遇した際に現場の指揮官が難しい判断を迫られる局面も予想されるため、派遣部隊は現地到着までの間、武器使用の手順や相互の連携を繰り返し訓練中。家族もさぞかし心配だろう。 軍艦マーチが鳴り響く広島・呉基地で14日、出港する2隻を約1200の乗組員家族らが見送った。黄色いハンカチや帽子を振る人もいた。甲板に整列した乗組員らは白い制帽を回して答礼した。呉港沖では、反対派の市民団体「ピースリンク広島・呉・岩国」約30人がゴムボートを浮かべて抗議活動を行った。その横断幕には「自衛隊の参戦を許さない」とあった。 これほど不安だらけのなかで見切り出港させたにもかかわらず、現地で見送った麻生首相は、海賊対処法案について「一日も早く成立するように頑張らなければいけない。事が起きてからでは遅い」とKYコメント。まるで他人事だからあきれる。 日本からはるか約1万2000キロ離れたアデン湾を目指し、航海する沈黙の艦隊の乗組員の胸中には何が去来しているのだろうか。中途半端に出撃命令を下した麻生首相の政治責任はきわめて重いといわざるを得ない。