しかし小沢の秘書と、同じく側近の石川知裕衆院議員が政治資金規正法違反とその疑いで逮捕、事情聴取されたことで、民主党のイメージが悪くなってしまっている。
党内にも小沢に対するモヤモヤが霞(もや)のようにたなびいている。「思い切って若手による政策集団を…」といった声を党内から発しているのが、もう一人の副代表、前原誠司の取り巻き。
そこには、小沢が代表を辞めずにこのまま選挙に臨もうとしていることへの反発がある。
岡田が「日米両政府高官が交わしたとされる沖縄返還に関わる『密約文書』については政権交代が実現すれば、これまで日本政府が『密約はない』といっていたものを全部出す」と明言。これは、西松建設からの献金に関して十分な説明責任をしない小沢の曖昧(あいまい)さを皮肉って言ったものとも取れる。
また、前原の取り巻きも小沢への献金の多さに「あれでは選挙になったら、国民に『国民の生活が第一。』だなんて言えなくなってしまう。民主党のイメージダウンというか、昔の自民党の金権政治そのものの印象はぬぐえない」と、すっかり困惑しきっている。
両副代表のこうした意思も考えてのものかどうかは知らないが、民主党の若手議員の間からは独自に政策集団を作って選挙に対応しようとする動きが出てきている。
「小沢がもっと明確に説明責任をしないと、民主党は四分五裂してしまいかねない。そんな蛮行も見え隠れする」と自民党のある派閥幹部は、こう言ってほくそ笑んでいる。
その自民党だが、各派閥は民主党の分裂含みの党内情勢に注目している。4月か5月に行われるといわれている総選挙後を、にらんでだ。
「もし自民党が勝てば、自民党内での派閥争いはいま以上に激しくなる。自分たちの派閥の人数をいかに増やすか。いってみれば民主党の動きを気にしつつ、自派の勢力増強を考えているんだ」(自民党関係者)
また別の自民党関係者はこう言う。
「どっちもどっちだよ。まさに自民党も民主党も目クソ鼻クソ。まあ、それにしても共産党と社民党の存在感はないね。アフリカのソマリア沖の海賊対策で海上自衛隊の護衛艦が2隻出港した。ところが、この共産党と社民党は『憲法上問題あり』と相変わらずの物言い。時代錯誤もいいところ。こんな野党と共闘したいと小沢一郎が公式に発言していることも、岡田や前原を刺激しているのは間違いない」
選挙予想を前にして、逡巡する与党と野党。その上、与野党ともに朝令暮改とあっては、国民はたまったものではない。(文中敬称略)